2022年5月30日月曜日

口銭

報道されたかどうかすら記憶に残らない程ですが、ひっそりと既成事実化しました。硬貨の預け入れ有料化です。金融業界や日本郵政と行った利益を享受する側からの圧力や、目ヂア側の忖度があったとしても、さもありなんという印象しかありません。(R4.5.13)

例えば三菱UFJ銀行では、現在、大量硬貨取扱手数料として、ATMでの取引を除く現金入金、現金振込の際、取り扱う硬貨の枚数に応じて手数料が課せられています。

お取扱い枚数 大量硬貨取扱手数料(消費税込)
100枚まで        無料
101枚以上500枚まで  550円
501枚以上1,000枚まで  1,100円 
1,001枚以上      1,650円以降、500枚毎に550円を加算)

店舗併設のATMでの入金は、平日のみ硬貨100枚まで無料とのことです。

ネット銀行の場合は入出金の主な窓口はコンビニ等の無人ATMで硬貨の取扱はありません。

そして、ゆうちょ銀行ですが、窓口での硬貨取扱料金は、

硬貨枚数       料金
1〜50枚              無料
51〜100枚                550円
101〜500枚  825
501〜1,000枚            1,100円 
(1,001枚以上 500枚ごとに550円を加算)

ですが、目を引くのは店舗併設のATMを利用すると、いかなる場合でもATM硬貨預払料金がかかるということです。

硬貨枚数       料金
1〜25枚              110円
26〜50枚                220円
51〜100枚  330円 
(上記は預入の場合、払い戻しでは1枚以上で110円) 

つまり、ゆうちょ銀行に100枚の一円硬貨を持参して口座に入金しようとすると、窓口では550円、ATMでは330円の手数料が必要ということです。入金票の金額欄に100と記入して100枚の一円硬貨を窓口に渡すと、都度450円口座残高が減っていくわけです。口座残高549円では入金を受け付けてもらえないのかもしれません。この一円硬貨の入金は窓口での50枚までの入金以外は何枚になっても常に

入金金額<硬貨取扱料金

ですから、入金を繰り返すほど口座残高は減っていきます。穴の空いたバケツに水を入れるどころの話ではなく、入れた水の分量以上の水がバケツから流出していきます。

ちなみに5円硬貨100枚では、窓口では差し引き50円、ATMでは差し引き170円を入金することができます。

同じ日本の法定通貨、円であっても硬貨の枚数によってはその額面の総和ほどの価値を持たないわけです。1000円の紙幣を上記ゆうちょ銀行の口座に入金すれば口座残高は1000円増えますが、一円硬貨1000枚を入金すると口座残高はその度に100円づつ減っていきます。

━━紙幣の1000円札が持つ価値は1000円ですが、一円硬貨1000枚には1000円としての価値はない━━

形態によって法定通貨の価値異なるという事実に何とも釈然としないものを感じています。

上述したように口座に硬貨を入金すると口座から硬貨取扱料金が引き落とされる、つまり、硬貨を入金ではその価値が減じられて入金されるわけです。そうなると、入金する側は価値が減じられない範囲で硬貨の枚数を抑えたり、硬貨枚数を分けての入金が自然の流れです。しかしながら、そういった行動では全く対応できない、硬貨取扱料金の課金を回避できない入金者も容易に想定できます。賽銭や浄財に硬貨が多用される寺院や神社、飲料などの自動販売機やコインランドリー、ゲームセンタ等、サービスや物品の対価支払いが硬貨での支払いを前提としている事業者、入場料や入館料が高額ではない観光施設や美術館、日銭商売が一般的な町の喫茶店や食堂、注文単価が低額なファストフードチェーン、コンビニあたりがその典型です。

そういった入金時に硬貨取扱料金の課金を回避できない事業では、法定通貨であるにも拘らず額面通りの入金が不可能です。入金口座には常に[(入金金額)-(硬貨取扱料金)]しか残高が増えないわけで、見方を変えれば、通貨の減価が起こっているということです。

この硬貨の入金に関わる価値の減損には、注視すべき問題を孕んでいると考えています。今、話を非常に単純化して、100という通貨を硬貨で入金する場合、10の硬貨取扱料金が課せられるとします。この場合、入金100に対し、口座の増額分は90です。”金は天下の回りもの”ですからこの90が出金され、社会をぐるぐる廻って再び口座に入金される際には再度減価されて口座の増分は81です。つまり、入金と出金が繰り返される度に、最初の100という価値が漸減していくわけです。この漸減は社会全体の硬貨の量に依存するのではなく、延べの硬貨流通量で決まります。経済活動の活発化、即ち、通貨の量と移動の頻度が増加すると共に通貨の価値が目減りしていくことに他なりません。

社会全体の通貨量とその動きが不変、つまり、パイの大きさ(経済活動の規模)が一定であれば、その中の一定割合を口銭(=硬貨取扱料金)が占めるということです。で、口銭が差し引かれた残余分が次の経済活動に充てられると。以降その繰り返しですから通貨量は目減りする一方で、これは経済活動の萎縮を意味していて、好ましからざる状況です。

古今東西、関所の関銭の如き手数料の無料化、減額は経済活動を活性化させてきたのは間違いありません。今般の硬貨の預け入れ有料化は、当にそれと真逆の施策に他ならないと考えます。




(追記していきます)

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