2018年6月16日土曜日

上前3

前のエントリに続けて、国民健康保険の保険料(税)のキャッシュレス納付について記してみます。国民健康保険には市町村国保と職域国保に分かれるようですが、ここではキャッシュレス納付という観点から市町村国保についてのみ考えます。この市町村国保の被保険者が国保全体の被保険者の九割程度を占めています。

市町村国保の対象者は、農林水産業従事者、自営業者、被用者保険に該当しない非正規労働者、退職者、無職者であり、専業主婦・専業主夫、学生や未成年者等も含まれます。

(建設産業従事者、医師、歯科医師など、国保組合の設立が認められている同種の事業者、業務従事者は残り一割の国保組合の対象となるようです。)

市町村国保は事業の主体が市町村であることから、同条件の被保険者であっても市町村によって保険料は異なり、又、納付方法も全く同じではありません。

各市町村の定める保険料の納付方法が全く同一ではないことを記すために冗長になりました。

で、愛知県の名古屋市、春日井市、瀬戸市、尾張旭市、長久手市、安城市の場合について各自治体のサイトを調べてみた処、
1.納付書による納付についての説明が全くなく、恰も口座振替がデフォルトの納付方法であるかのように記載している自治体(名古屋市、瀬戸市、長久手市)
2.”納付書”の語だけは口座振替と並べて記載している自治体(春日井市、安城市)
3.”納付書で納める方法”として納付場所や取り扱い期限などの説明がある自治体(尾張旭市
と、自治体によってその説明に差異を感じました。勿論、便利さを強調して未納の恐れが少ない口座振替を推しているのは各自治体で共通しています。未納や納付忘れ低減や、事務経費の軽減国民年金の場合と同じ理由なんでしょうが、であれば同様に”クレジットカード納付でもいいんじゃないか?”という思いがもたげてきます。

いずれにせよ、自治体の与り知らぬ処かもしれませんが、口座振替と納付書利用の二つの納付方法があって、納付書利用の場合には現金、電子マネー、Yahoo!公金支払い(一部自治体)での納付が可能との記述はいずれの自治体にもありませんでした。

電子マネー、Yahoo!公金支払いというのもキャッシュレス決済の一形態ですが、そういった説明は自治体以外のサイトでしか検索できませんでした。巷間でキャッシュレス決済が喧伝されている中で、地方自治体は口座振替以外のキャッシュレス決済に対する地方自治体の極めて消極的な姿勢が覗えます。

さて、国民健康保険の保険料(税)のキャッシュレス納付についてYahoo!公金支払いが可能な長久手市を例にもう少しみてみます。

長久手市の場合、保険料(税)の納付方法は口座振替、納付書(現金/電子マネー/Yahoo!公金支払い)から選択できます。この中、電子マネー利用では国民年金の場合と同じくクレジットカードによるチャージで0.5-1.5%のポイント還元があります。Yahoo!公金支払いではクレジットカードの利用でポイント還元はあるものの支払い手数料が課せられています。この支払い手数料は長久手市の場合、
納付金額             納税者手数料 
   ~10,000円       54円(税込み)
10,001~20,000円     162円(税込み)
20,001~30,000円     270円(税込み)
30,001~40,000円     378円(税込み)
40,001~50,000円     486円(税込み)
以降10,000円増える毎に108円(税込み)ずつ加算
とのこと。興味深いのは納付金額が高額になるほど手数料率も高率になっていることです。例えば10,000円の納付では0.54%の手数料率ですが、40,001円の納付では1.21%と、二倍以上です。手数料でも手数料率でも一律ではなく、納付金額が高額になるほど手数料負担が大きくなっている、というのも理解に苦しむところです。

で、手数料負担ポイント還元を合わせた収支について云々するつもりは全くありません。ただ、手数料が必要という点について考えてみます。

国民健康保険では納付金は、自治体によって保険料とも保険税とも称されています。”税”的性質を考慮するならば、Yahoo!公金支払いを利用することで、Yahoo!やおそらくクレジットカード会社に支払う手数料分、国保財政が目減りします。そのため、手数料分全てかどうかはともかく納付者に一定程度の手数料が課せられているなだろう、と容易に受け止めることができます。

保険料(税)が同額の被保険者ならば納付方法に依らず等しく国保財政を支える、として手数料を課す理由が理解できないわけではありません。

しかしながら、そうであるならば、前のエントリで記した国民年金はどうなんだという話になります。Yahoo!公金支払いの利用において手数料を課し、国保の被保険者に対し等しく応分の負担を求める姿勢と、クレジットカード利用による国民年金保険料の納付で、年金資産からカード会社への手数料支払いが生じ、結果として国民年金原資の減損を容認する姿勢は、符号していないように受け止められます。国保財政運営の責任者である都道府県と日本年金機構とで社会保障に対する姿勢が一致していない、ということです。

加えてその一方で、国保の保険料(税)納付をクレジットカードチャージした電子マネーを用いてコンビニ窓口の納付書で行うと、カード会社への手数料支払いによる国保財政の流出と共に被保険者負担の不平等化が起きてしまいます。

財源に対し相応する負担を納付者に等しく求めるのか、おそらく納付率を上げるためにインセンティブを用意して不平等性を容認するのか、社会保障を担う公的機関としての姿勢を強く問いたいところです。

又、Yahoo!公金支払いによる国保の保険料(税)納付に手数料が課せられるという点について、既に記したように飲食店や物販店等、いわゆる民間業者ではカード会社との契約違反とされています。

民間業者に対しては一物二価を禁止する一方で、Yahoo!公金支払いによる国保の保険料(税)納付では堂々と手数料を課すというのも、それはそれで違和感を覚えます。タブルスタンダードでアンフェアです。

言い分として財源を毀損させないとか、納付者間の公平性を保つという理屈は判らないでもありません。しかしながら、それでは何故民間業者の場合のみ、決済手数料で業者の利益を圧迫し、或いは、現金払い客とカード払い客間の不公平を生む契約をカード会社から強いられなければならないのか。

換言すれば、これはカード会社による公の優遇という官民差別ではないかという見方もできるわけです。

さて、面白いことにYahoo!公金支払いを利用して国保の保険料(税)を支払う場合、納付先の市町村によって手数料が異なっています。愛知県内の市町村で、例えば2,5000円の保険料(税)を納付する際、税込みで
216円(一宮市)〜259円(蒲郡市)〜270円(春日井市、安城市、長久手市)〜324円(東郷町)
といった差があります。

この違いについて、他の地方税、国税のキャッシュレス(クレジットカード)納付と併せて次のエントリで考えてみます。

2018年6月2日土曜日

上前2

前のエントリで記したクレジットカード決済の手数料に纏わる話を、先述の国民年金の保険料支払いに当て嵌めてみます。

クレジットカードを使用した場合の保険料の納付額は現金の場合と同額ですから、クレジットカードの規約には抵触していません。

ただクレジットカードによる納付では、納付額の一定割合が手数料としてカード会社に支払われているのは明らかです。納付者に0.5-1.5%のポイント還元があることがその証左です。

ここでレジットカードを利用した納付者は、ポイント還元がある分現金納付者より優遇されている格好になります。それはそれで不公平感が醸し出されるわけですが、そこだけに留まらない問題があると考えます。

クレジットカードにより日本年金機構に納付された保険料は、現金納付の場合と同額であってもそこからカード会社への手数料が支払われます。年金原資に充当される額は現金納付の場合より手数料分だけ少なくなるわけです。

年金の受け取り額を含めた受給条件は、現金で納付しようがクレジットカードで納付しようが同じです。従って、カード納付の件数が増加するに従って手数料支払も増加し、結果として加入者全体の年金原資が減少します。現金で保険料を納付している加入者もこの影響を受ける、ということです。不公平感は否めません。

では、口座振替とクレジットカード納付ではどうでしょうか。2年前納の場合で較べてみますと、各々378,580円(現金納付、クレジットカード納付)、377,350円(口座振替)と、口座振替が優遇されています。現金納付とクレジットカード納付で金額が同額というのは確かにカード会社の規約に沿っています。しかしながら、その一方で、同じキャッシュレス支払いとみなすことができる、クレジットカード納付と口座振替で納付金額に差が生じていることに釈然としないものを感じます。システムは異なれど、共にネットワーク上で口座間の資金移動(数字の付替え)という操作に過ぎませんから。

納付先である年金機構は、(一番おトクな納付方法)として口座振替を推奨しているように見受けられます。機構としては意図/偶々に関わらず、保険金の未納や納付忘れ低減や、事務経費の軽減のためなんでしょう。ただ、そういった目的ならばクレジットカードによる納付でも同じ役割を担えるはずで、口座振替のみが優遇される理由を推し量れません。

成る程、前のエントリで記したようにクレジットカードによる納付は、保険金をカード会社が一時的に立て替えていて加入者の銀行口座から引き落とされるまでは融資という扱いなのかもしれません。口座振替では振替日に納付金が銀行口座から直ちに引き落とされます。

しかしながら、カード納付の場合であっても年金機構の立場からは取りっぱぐれてはいないわけです。立て替え分はカード会社が納付者の口座から引き落とすか、できなければ債権としてきっちり回収するでしょうから。

共にキャッシュレスの前納であっても口座振替にのみ優遇割引があり、クレジットカードによる納付では優遇を受けられない、というのも整合性がとれていないように感じます。

ところが、ここから話をややこしくしているのがカード利用によるポイント還元の存在です。口座振替で優遇される割引額は2年分前納で1230円ですが、例えば1%のポイント還元のあるクレジットカードを利用して納付すれば、3785ポイントが還元されるわけです。ポイントを円換算して考えると、クレジットカード納付の方が却って優遇されることになり、これまでの話がひっくり返ってしまいます。

一時的にカード会社が立替え、即ち納付者が借用して保険金を納付する形となるカード利用の方が、直ちに銀行口座から引き落とされる口座振替より(ポイント還元を含めれば)低額になる...

おそらくこの仕組みはカード会社に支払われる手数料にあるのだろうということは容易に推測できます。ポイント還元分と、それを差し引いてカード会社に残る実質的な手数料の合計がカードの手数料として支払われれば辻褄は合います。

このあたりの手数料率は明らかではありませんが、加入者全体の年金原資を蝕んでいるとみて間違いないのではないでしょうか。

勿論、口座振替であっても引き落とし手数料は納付者が間接的に負担しているわけで、こちらも不明朗です。公的年金の制度である以上、納付した保険金の中、年金原資として運用に回されるのはどの程度の比率なのか、透明性の向上が図られるべきと考えます。

では、国民年金に並ぶ社会保障制度である国民健康保険の場合はどうでしょうか。


次のエントリに続けます。