2014年7月4日金曜日

野次(4)

4.黙殺

今回のセクハラヤジ騒動は、社会通念上、強者(与党、男性、年上)から弱者(野党、女性、年下)に浴びせられたヤジであったため、古くから日本人の好んできた判官贔屓ストーリーに仕立て上げようとメディアが煽動した要素も多分にあると捉えています。

例えば、独身、或いは子のいない中年のおっさん与党議員が少子化について質問している際、既婚、或いは子を持つ野党の若手女性議員から、

――自分が早く結婚したほうがいいんじゃないか――


と野次を浴びせられたとしたら...

ここまでの騒ぎになったでしょうか。

野党のベテラン女性議員が与党の若手男性議員を野次ったとしたら...
男性議員が男性議員を野次ったとしたら...
女性議員が女性議員を野次ったとしたら...

いろいろな組み合わせが想定できるのですが、同じ内容の野次であっても、メディアに騒ぎ立てられ非難、糾弾される場合と、黙殺され殆ど問題とならないまま過ぎていく場合があるように見受けられます。

セクハラ野次ではありませんが、前のエントリで記した、(民主党議員から安倍首相に対して)
また下痢するぞ
真偽は定かではありませんが、
子供が出来ない安倍さんは種無しカボチャ。 そんな種無しスイカに何が分かるんですか。
などは本騒動以上に発言者の品性が疑われる発言だったわけですが、大きな騒ぎにはなりませんでした。

議場での野次ではありませんが、
塩村文夏氏による、男性タレントへの中傷発言。「みんなの党」党員は黙認
も...

ある意味、偏向したメディアの意図的な差別かと思うわけです。


ちなみに、同性からの野次ならばセクハラにならないのでしょうか。気になるところです。



5.地雷

一般論です。

本騒動の野次は、当初の
そんなことを言う前に、おまえが早く結婚しないのかっ!!

早く結婚しろ!!
から、実は
お前が早く結婚したほうがいいんじゃないのかー
だったわけです。この後、”産めないのか”、”まずは自分が産めよ”といった野次があったとされていますが、これは客観的には確認できていません。

上記”結婚する”という部分を”子を産む”に置き換えれば、”...子を産まないのか”、”...子を産め”、”...子を産んだほうがいいんじゃないのか”となります。より酷いセクハラ野次とされる”産めないのか”とは意図が異なります。”産めないのか”は”結婚できないのか”に相当しますから。

自らの意思で選択した場合も含む”する”、”しない”に対し、”できないは”本人の希望に反してであり、資質、能力を問う意味合いが含まれてきます。

ここで、配慮に欠けた田母神氏のツイートです。
塩村都議へのヤジがどうして女性蔑視なのか。いいじゃないかそのくらいというのが正直な気持ち

野次のどの部分に対して”いいじゃないかそのくらい”なのかはわかりません。

例えば、家族の介護等で結婚できない、或いは、不妊治療を続けているにも関わらず子を授からない。そういった本人の責によらない何らかの理由で意思に反して結婚できない、子供を持てない場合があるということは容易に想像できるわけですが...

田母神氏の価値観が、全ての女性は結婚して出産でき、又、そうするのが当然であり、できない場合が脳内で排除されているのであれば、ある程度の年齢の女性が未婚、或いは、子がいない場合、”する意思がない”と捉えて該ツイートに至るのも致し方ないことなのかもしれません。

いずれにせよ軽率なツイートであり批判は免れない、というのが正直な気持ちです。


その一方で、肝胆相照らす友人、NHK朝ドラの言葉を使えば”腹心の友”でもない、いわゆる知人や疎遠になっている縁者の集まり、具体的には職場、慶弔の場町内会等で、見知らぬ他人でもない上司、同僚、親戚隣近所のおじさんやおばさんから似たような発言が聞かれます。その意図はともかくとしてです。

友人、親しい間柄であればある程度の察しはつくのかもしれませんが、そうでなければ事情を知る由もないのは当然で、相手の事情もおかまいなしにこういった言葉を投げつけてくるわけです。

この時、場の状況、語尾や語気、言回し、更にはお互いのこれまでの先入観、印象によって悪意あるハラスメントになってしまう恐れがあります。ガサツで配慮を欠く人間の、”そんなつもりではない”発言が相手に不快感を催させることはよくあることです。

では、結婚や子供について尋ねることは全否定されるべきなのでしょうか。相手に不快感を与える恐れがあるからと、結婚や子供についての話題を意識的に避けるというのも息苦しさを感じてしまいます。


例えば、二、三十年ぶりに中学の同窓会に出席した場合など、同級生の名前記憶の片隅にわずかにあるのみで、顔と名前が一致しないことだってままあります。そういうほぼ他人に対し、近況を(=家族について)尋ねることすら許されないなら場が持ちません。同級生の女性とは会話ができなくなってしまいます。まぁ、尋ねられるのを待ってればいいのかもしれませんが...

誰にも話しかけられなかったとしたらそれはそれで辛いものがあります。

どうして結婚しないの
どうしてお子さんがいないの)?ー
どうして結婚しないの(どうしてお子さんがいないの)?ー
ー結婚してないの(お子さんはいないの)?ー
はともかく、

ー結婚は(お子さんは)?ー
ーご家族は?ー

も許されないのでしょうか。

ー今、どちらにお住まいですか?ー
から初めて安全を確かめながら徐々に話を広げつつ、常に警戒を怠らない、疲れますし、話も画一的になってしまいます。

酒食の席でそんな器用なこと...自信がありません。

”結婚”、”子供”そういった単語それ自体がアンタッチャブルな地雷とみなされることがないように願っています。

英国在住の日本人ジャーナリストの方が、
...塩村都議に向けられたような言葉は公の場ではもちろん、友人たちとの私的な集まりでも、家庭の中でも口にできない。そんなことは怖くて、とても口にできない。
述べられていますが、英国では結婚、子供についてどこまでの発言が容認されているのか知りたいところです。

私には住む資格がないのかもしれません。住みませけど...


(続)

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