2019年12月2日月曜日

選別(3)

以前のエントリを受けての話になります。

今回、と言っても随分以前の話になりましたが、このリクナビが手掛ける就職支援事業を足がかりに、リクルートとしては大学入試関連時業への新規参入という思惑があったのだろうと推量しています。

現在は”味噌をつけた”形ですが、雌伏しているだけで断念には至っていないかと。実際、かなり以前から教育関連事業を手がけているようですし、スタディサプリという、ネット経由の通信教育事業にも注力しているようです。

以前も触れましたが、ほぼ同年齢の極めて大量の人員が同時期に入社する、就活〜就職というイベントと、大学の志望校選択〜受験〜入学の構図は極めて類似しています。

膨大な人員の出身大学、自己アピール他の個人情報を取り扱い、各々に会社の求人情報を提供して求人と求職のマッチングがリクナビによる就職支援の事業です。場合によっては適性診断ツールによる求職のトレンド?方向性?を調整したり、内定辞退率を算出するのもマッチング最適化の一環なんでしょう。求職者の不利益になる恐れのある内定辞退率については批判を浴びましたが。

一方、大学の志望校選択は、大学入学希望者のセンター試験自己採点結果と当人の志望大学いうこちらも膨大な数の個人情報を基に各々を大学に割り振ることから始まります。その結果を統計処理やらAIやらを活用して合否の可能性を算出すると。最終的な受験校の決定は各人に委ねられるわけですが、そのための確度ある情報が求めらています。大学入学希望者と受験大学のマッチング最適化が事業ということです。

供給(求職者、受験生)と需要(求人会社、大学)の関係に偏りが生じないように情報を提供して平坦化(=最適化)を図ることが事業目的ではないかと。その最適化プロセスで得られる口銭というか手数料が事業者の収益源である、そういった理解をしています。

その視点に立ってみると、リクルートが近い将来、この大学入学可能性判定事業に参入する、という推測はそこそこ妥当性があるのではないかと。現在はおそらく基礎データ収集の時期で、この状態は当面続くものとみています。上記スタディサプリもその一環でしょう。率直にいえば良質低廉なコンテンツを提供して大学への進学希望者を囲い込んでデータを収集する段階ということです。

私の知る範囲に限れば、大学受験の準備に予備校というのは現役生ではそれほど一般的ではなかった印象があります。通うのは浪人生で、それも全てではない、といった処です。身近になった転機はやはり共通一次試験の導入以降ではないでしょうか。公立、私立を問わず高校で、共通一次(センター)試験、二次試験の模試が年数回実施され、ほぼ全ての大学入学希望者が受験するようになりました。

明らかに大学受験のプロセスにおいて予備校が不可欠の存在として組み込まれてしまっています。

かつては三大予備校と並び称された河合、駿台、代ゼミの寡占状態にあった大学受験業界でした。その後、通信技術の発達の発達に伴い、映像配信授業で先行した東進、通信教育で優位性を持つベネッセが三大予備校の後を追っている状態でしょうか。そこにリクルートがネットとスマホを活用した教育システムをひっさげて参入を目論むと、そういった構図に映ります。

まぁ、現状では個人情報の漏洩でベネッセが、不適切な取り扱いでリクルートが味噌をつけているわけですが。

さて、ここでリクルートの特徴を総じてみると、上述のように需要と供給をマッチングさせる場、いわゆる市場の提供が主たる事業と括ることができます。需要者、供給者を掘り起こすことはあっても、あくまで場の提供に留まっています。自らが供給者となって物品、サービスを販売することは殆どないようです。リクルートグループはこれまで様々な物品、サービスに関する情報を場に提供し、需要と供給をマッチングさせてきました。取り扱う情報としては例えば、転職やアルバイトといった人材、中古車、不動産、結婚、旅行、飲食店、美容院あたりが直ぐに思いつきます。

これまで、と言ってもかなり以前までのことですが、該情報が公開され、需給のマッチングを促す場は雑誌でした。この雑誌という媒体でリクルートは永きにわたって雑誌上でバーチャルな市場を提供してきました。競合は勿論ありましたが各市場の運営元としては最大手だったと認識しています。

このような情報誌が登場する以前、需要側、いわゆる顧客は足(店への飛び込み)と目(テレビや看板の広告)、耳(紹介やラジオ広告)に頼って個別に商品を見定め、或いは実際に体験する必要がありました。そういった非効率な比較、選択行為が情報誌の登場により様変わりしました。雑誌上で、極端に言えば全国各地の供給者が提供する物品、サービスを比較検討できるようになったわけです。

点在していた需給マッチングの場を、規模を拡大して雑誌上に集約、換言すれば非効率な事業に雑誌という効率化ツールを持込んだ、ということです。その市場への参加料がリクルートの収益源であり躍進の源泉でした。


その後、時は変遷し今日、上記市場機能を担う媒体は雑誌からネットに代替され今に至っています。雑誌形態による市場が完全に消失したわけではありませんが、ネット上の市場と併存しつつも雑誌は徐々に消失していくのは間違いありません。

そういった潮流の中で、果たしてリクルートは市場の運営媒体を雑誌からネットへと滞りなく移行できているのか、ネットへの移行後も依然大手の位置を保ち続けているのか、興味のある処です。

換言すれば、ソニーにおけるトリニトロンの例に似た、イノベーションのジレンマをリクルートは乗り越えられたのだろうか、ということです。


次のエントリに続けます)

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