2018年4月3日火曜日

斜上

元ロシアスパイ暗殺事件に絡み欧米とロシアの対立が激化し、米中の貿易戦争に対する懸念が解消されない中、一体何やってんだ、という残念な思いです。

森友学園の国有地払い下げ騒動に絡み、佐川前国税庁長官の証人喚問が行われました。予め予想されていたことですが、

”訴追の恐れがあるので答弁を差し控えさせて頂く”
”現在、捜査中ですので答弁を差し控えさせて頂く
といった、まあ、証言拒否が続いたわけです。これを受けてメディアスクラムが始まり街の声を含む世間は佐川に対し非難一色の状態です。

ただ、的外れな印象が否めませんでした。特段氏を擁護するつもりはないのですが、思う処を少し記してみます。

森友学園への国有地の払い下げに関する異例の貸与と大幅値引き、この事案についての国会での虚偽答弁と答弁に沿った決裁文書の書き換え疑惑といった処でしょうか。

シナリオは、総理と総理夫人を含む官邸からの(暗黙の?)指示によって森友学園に対し不当な安値で国有地が払い下げられ、これを隠蔽するため佐川氏が国会で虚偽答弁、答弁との整合性を図るため払い下げの決裁文書を書き換えた、と。

巷間、総理や総理夫人の意向を忖度して払い下げ手続きが進められたとありますが、これは佐川氏が理財局長に着任前に既に決裁済みの話と認識しています。佐川氏の虚偽答弁や決裁文書の改竄疑惑は、言わば組織の責任者としての事後処理であって、やはり、決裁を承認した当時の近畿財務局長や理財局長からの経緯、事情の聴取が核心部分とみています。

で、佐川氏の国会答弁云々についてはこれまで散々”忖度”が行動原理として指摘されてきました。しかしながら、前任者による決裁済みの案件に対する答弁ですから、”国会を混乱させないこと”に主眼を置いた答弁が混乱を招く結果となった、と捉えています。”国会に波風を立てない”、これは官僚の最も傾注すべき職務であって、これを最優先に自身だけでなく大臣他の答弁書を作成していると。それを前提に考えれば、”事前の価格提示はなかった”、”記録は残っていない”といった木で鼻を括ったような、言質を取られない答弁も腑に落ちるわけです。

これが仇となって答弁との整合させるために公文書の改竄へと進むわけですが。

ただ、決裁文書改竄に関し疑問なんですが、そもそも経緯をあれほど詳細に記した文書が公文書として承認されるものなんでしょうか。

総理夫人の
━━いい話だから前に進めてください━━
発言に着目して考えてみます。事実か否かはともかく、これは不当にな安価で国有地払い下げを希望している森友学園籠池氏からの伝聞に過ぎません。払い下げ価格についての交渉を有利に進めようと、籠池氏が利用している材料であるのは間違いありませんが、決裁に影響を与えたか否かは不明です。

決裁に影響がなかったならば、無関係な該発言は本来文書に記載されるべきものではありません。影響があったならば、現場としてはその異例で不当な圧力への対応について本省からの指示を仰いだはずで、近畿財務局の独断とみなされないためにも続く本省の指示があった旨も記載されて然るべきです。尤も、後に行政の公正性を問われ、問題の火種になりかねない発言ですから影響の有無に関わらず意図的に記載しないというのも有り得たと思いますが。所謂、隠蔽です。

つまり、決裁文書に上記総理夫人の文言を記載する合理的な意図が見出せない、ということです。”近畿財務局の判断で総理夫人の意向を忖度して異例の安値で払い下げを決定した”という事実を記録しておきたかった、といった意図を除いてです。そうであったとしても何の目的で?という疑問が残ります。

決裁文書の作成者本人以外の、該文書に目を通すべき承認者、決裁責任者に対しても該文言を削除しなかった、させなかった理由が不明です。碌に読むことなく承認印を押したということでしょうか。

こういった状況は、総理夫人の言葉を決済文書に記すことが、それが伝聞であったか伝聞だからかにしても、これほどまでの騒動になるとは、文書作成者や近畿財務局は思いも寄らなかったことを窺わせます。

この事態を想定できなかったのは、近畿財務局にリスク管理能力が欠けていた、換言すれば間抜けだったことによるもののわけです。このリスクに対する感覚が鈍っていたということは、これまで同様な公文書を作成しても事態は支障なく進んできた、或いは、事後に文書を改竄することが常態化していたのでは、と勘ぐってしまいます。

国有財産の払い下げについてはその公正性に疑念が生じる事例はこれまでもあったようです。例えば、
大手新聞社の国有地格安購入案件
や、結局頓挫しましたが、オリックス不動産への日本郵政の「かんぽの宿」売却を巡る騒動も記憶に新しい話です。遡れば明治時代の製糸場、鉱山、製鉄所といった官営工業の旧財閥系政商への無償に近い払い下げ以来、口利き、圧力、裁量によって公正性が変歪された不透明さが払拭できていないのかもしれません。

国有財産の払い下げには慣習として不公正がつきもの、理財局内でそういった認識が伝統的に継承、共有されているのであれば、総理夫人の上記文言も異例の話ではないということになります。これまでも様々な事例で在った口利きの一つに過ぎず、削除して隠蔽する程ではないと。

森友学園への国有地払い下げも、そういった感覚で決裁文書に国会議員や総理夫人の文言を何気なく載せたら、野党が騒ぎ出して理財局長が波風を抑えようと答弁したと。その結果、答弁後慌てて決裁文書を答弁に合うように改竄するはめになった、そんな可能性も捨てきれないということです。

これが適切だったとするつもりは毛頭ありません。ただ、やはり優先すべきは、払い下げる国有地の長期に渡る借地契約とその賃料、その後の売却に際し大幅な値引きに至った経緯、又そうまでして森友学園に払い下げた事由の解明であると考えます。

そのために必要なことは佐川氏の証人喚問ではなく、決裁当時の近畿財務局長や理財局長からの事情聴取です。しかしながら、佐川氏の証人喚問が不発に終わった今、このまま有耶無耶になって忘れ去られていくというのが妥当な流れでしょう。


与野党共に森友問題一辺倒で、自国の元スパイを暗殺して独裁政権を堅持するロシアに対し言及も行動もしないというのも如何なものかと。対岸の火事なんでしょうか。ロシアの行為を肯定とまではいかずとも黙認していると受け止められてしまいます。日本の目指す処に一致しているということ

政治家の口利き、偽証とか公文書書き換え疑惑の追求も結構なんですが、小悪を憎み巨悪はスルーというか、自由の侵害や民主主義への挑戦に対しもう少し目を向け行動を起こすべきなんじゃないかと、率直に思った次第です。





追記していきます。

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