2016年12月12日月曜日

化粧

移動に電車を使うことは非常に稀なんですが、車内で女性が化粧する姿を見かけます。数少ない利用時ですら必ずと言っていい程そういった場面を目撃しています。もはや車内における乗客の日常的な振る舞いの一つになっているのでしょうか。

今更珍しくもありませんが、定期的に車内での化粧の是非についてボヤ騒ぎが起こります。依然、社会的な合意が形成されるまでには至っていないようです。まぁ、メディアとしては燻り続けた方が定例記事として取り上げ続けられるわけですから、現状維持を望んでいるのかもしれません。

先日ネット上を賑わせたのは、
東急電鉄「車内で化粧はみっともない」 啓発広告に賛否両論の嵐
といった記事でした。

その際、様々な視点からの主張は繰り広げられたようですが、結局、混沌とした状態が整理されないまま騒ぎは収束を迎えました。

論争の中で、1)公共の場、電車内、更には混雑する電車内の、化粧の場としての適否、2)義務づけにも似た、女性の化粧を当然の身嗜み、マナーと位置付ける社会的価値観(圧力)の正当性、といった辺りが印象的でした。

どうでもいい話といえばその通りですが、少し考えてみます。こういった事案の中にも社会が賢くなる端緒が潜んでいるような気もしますので。

ある乗車率以上に混雑した電車内で化粧する女性に対する批判は理解に難くありません。閉じた空間内、乗客の密度一定以上になれば、粉や匂いを放散させ、場合によっては他の乗客の衣服を汚す可能性が予見される、というのがその理由です。周囲に実害を与える恐れがある迷惑行為として電車内の化粧を捉えているわけです。

で、該可能性が極めて低い条件下ならば、電車内の化粧は容認されるのか、更に電車内に留まらず公共の場ではどうなんだ、といった話になります。

今、乗車率50%、100%(定員乗車)の状況を想定してみます。
乗車率50%:ほぼすべての座席が利用されている。 
乗車率100%:定員乗車。座席に着くか、吊革に捕まるか、ドア付近の柱に捕まることができる。
ちなみに乗車率150%でも”新聞が楽に読める”ようです。

つまり、全ての乗客が必ずしも着席していないとしても、殆どの座席が埋まっていて乗客同士が隣り合っている状態が乗車率50%です。

乗客同士が隣り合っている、言い換えれば、他人と席を隣り合わせている状態で、隣客が化粧を始めたら...上記可能性は低いとは言い難いんじゃないでしょうか。

即ち、乗車率50%であっても電車内の化粧が他の乗客に対する迷惑行為となる可能性を否定できない、ということです。(一人おきに着席している)座席の埋まり具合が50%以下、乗車率25%以下のかなり低い乗車率であれば、そういった恐れがなく、電車内の化粧は容認される、ということかもしれません。勿論、この容認は実害の有無という視座からのものであり、見苦しいとか、マナーといった視点は考慮していません

この25%以下の低乗車率という条件は、パーソナルスペースという語を用いても説明できます。乗車率50%で、ほぼ全ての座席が乗客で埋められている場合、偶々乗り合わせた他人同士が隣り合って着座していることになります。勿論、家族、友人、同級生、同僚といった、ある社会的関係のある乗客がグループで着座している場合もありますが、該グループの両端はやはり全くの他人と隣り合っています。

つまり、対面状態ではないものの、明らかに双方のパーソナルスペースを侵している状態にあります。乗車中、乗客は自身のパーソナルスペースが侵されていたとしても、電車内が公共の場であることを踏まえて我慢しているわけです。お互いさま、ということで譲り合い不本意ながら耐えていると。

そういった心情を鑑みれば、周囲に不利益を及ぼすかもしれない化粧という行為が、自身のパーソナルスペース内で行われること不快感を抱くのも、まぁ、当然でしょう。

電車内という閉じた公共の場に、偶々乗り合わせた乗客各々のパーソナルスペースが互いに不可侵となる乗車率以下であれば、電車内での化粧に対する不快感はそれほどではないのかもしれません。ただ、おそらくその乗車率は25%以下かと推察します。都市部の路線ではなかなか難しいのではないでしょうか。電車内での化粧に対する拒絶感は今後も解消には至らないのかもしれません。

以上は、実害の有無から見た話です。実現可能性はともかく、乗車率さえ極めて低ければ電車内の化粧は容認されるのでは、といった見方です。

これは他の公共の場、特に屋外のような開放的な公共の場における女性の化粧から受ける印象からも説明できると考えます。

以前、土曜日の午前11時頃、ローカル駅のホームでベンチに腰掛けて化粧する女性の姿を目撃したことがあります。又、公園、海岸、漁港、スキー場、寺社の境内といった屋外と、映画館、ホールやホテルのロビー、役所、学校、図書館、病院、デパートやスーパー、レストラン等の屋内ではどうでしょうか。

全くの個人的印象かもしれませんが、屋外の場合には電車内ほどの違和感を生じないような気がします。漁港など、場合によっては多少の滑稽な印象が伴うとしても...屋内の場合は、なんとなく近付き難い、できれば距離をとっておきたいといった印象ですが、屋外と電車内の間に位置づけられます。

結局、開放的な屋外では公共の場であっても女性の化粧はそれほど気にならず、屋内であっても対象から距離を保てる、場合によってはその場から離脱可能であるならば、電車内ほど苦にならないんじゃないかと。しかしながら、乗客相互が近接し過ぎで、既にパーソナルスペースが侵害されている状況下にある電車内では、自分のパーソナルスペース内で化粧をされる懸念もあり、それが忌避感、不快感の由来ではないかと推察した次第です。先述したようにこの問題は、電車内という一定の閉じた空間における乗客の密度に関わる問題ですから、解決は容易ではありません。物理的に不可能ではありませんが...


次のエントリに続けます。

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