2013年11月6日水曜日

線引

かなり間が空いてしまいましたが、前のエントリから引き続き、飲食店内で撮影した料理写真をブログで公開する行為について考えてみます。

北海道 上富良野町5本の木(嵐の木)、美瑛町哲学の木を撮影する観光客の余りの心無い態度、マナー違反が話題となったのは二、三ヵ月前でしょうか。

又、別のエントリでも触れていますがSNSのバカ発見器としての性能は依然低下することなく、その後も、王将、しまむら、ピザーラ、スシローと猛威を奮っています。

他にもUSJやTDLでの学生の迷惑行為等も記憶に新しいところです。

では、飲食店で料理の写真を撮影してブログで公開する行為は上記と何が違うのでしょうか。

ネットワークで公開された迷惑行為は、炎上を引き起こし、周囲から非難を浴びると共に個人を特定され、挙げ句には損害賠償請求に至ったり、威力業務妨害、強要罪として被害届けを出されたり逮捕されたりもしています。

ただ、これらはあくまで迷惑行為に対するしっぺ返しであり、実は写真撮影に駆り立てる動機は同根ではないかと考えています。

線引きは単に法令に抵触するか否か、他者に迷惑か否かに過ぎず、写真を撮影して公開するという行為に違いはありません。

勿論、両者には分別という溝があるわけですが...

上記エントリでも触れましたが、溝のあちら側に迷惑行為をする輩が元々存在しています。単にSNSで写真を公開して共感を得るという強烈な動機、デジカメによる撮影の容易化、情報の拡散性の大きさと高速化が彼等彼女等を顕在化させたということです。

では、こちら側の人々が溝を渡って向こう側に行ってしまうことはないのでしょうか。

従来、この溝は幅広で深く、彼我段差もあったと思います。ところが、上記要因に加え、個性の尊重というか、個人主義、放任自由主義の高まり、規範意識やモラルの低下、飲食に関わる衛生管理に対する過剰な要求と疑念、こういった諸々が溝を埋め段差を縮めているようにもみえます。

根底にある動機が同じであることに加えて、個人の価値観の多様化は軽々とブロガーをあちら側に連れ去り、或は、気がつけばあちら側にいた...溝が埋まったことで起こり易くなっています

こちら側に思い留まらせる、引き留めるのは分別という錨ですが、モラルハザードが起こり易い構造であるのは否めません。

例えば、食べログを覗けば至る処にそういった兆候が窺えます。(炎上する前に削除されるなり管理されていますが...)
 
実際あちら側の人々を定量的に推し測ることはできませんから、確証も根拠もありません。なんとなくです。メディアに踊らされているだけかもしれないこと否定しません。

上述のアルバイト従業員が引き起こした問題行動が何件も露見した時、”「うちら」の世界 - 24時間残念営業”というブログ記事が話題になりました。既に削除されています。

大雑把には、情報リテラシーは学歴に相応し、低学歴層はネットワークを介した向こう側の存在を理解できない、ということのようです。で、向こう側とリアルの自分の仲間(=うちら)を同等に捉えてしまい、問題行動を公開してしまうと...

ネットワークの向こう側を想定する力は、学歴というか学習の結果も一要因であることは否定しませんが、それのみに依存する、主要因であると私自身は考えていません。 

例えば、愛知県とか、名古屋市の飲食についてのブログを考えます。ブロガーの方々は県内、市内の飲食店を訪問し、店や料理の写真をブログで公開してレビューしています。

こういったブログの読者は、全てではないにしても、ブロガーと行動範囲が重なる、自分も当該飲食店を訪問可能な属性に偏るのは当然でしょう。これまで愛知県や名古屋市と関わりがあった、或は、今後関わりがありそうな読者を除けば、九州や北海道、東京、大阪、アメリカ、 ロシア、ブラジル、オーストラリア、イタリア、ケニアの読者は少なくて当り前です。

逆に、行動範囲が重なる読者はブログの情報を元にリアルの世界で追体験をして情報の共有が蓄積されていきます。物理的な距離も小さいわけですから場合によってはネットワークを介さない、リアルの世界での顔合わせもあるでしょう。

即ち、相互のコミュニケーションがネットワークを介してのみに依存する場合より、地域に限定された飲食のブログの場合では、ブロガーと読者の間に濃密な関係が形成されていくことになります。

ブログを含むSNS自体にも、
――気に入った人だけに閲覧してもらい共感を得たい―― 
意識があるわけですから、集まった読者は賛同者、支持者(=仲間)であり、 
本質的に”うちらの世界”を形成し易い条件が備わっていま
す。


結局、うちらが形成される順序は異なるかもしれませんが、ローカルのテーマを取り上げたSNSには上述の情報リテラシーを欠いたうちらの世界と共通の土壌があると捉えています。

尚、飲食店を訪問して提供された料理の写真を何のコメントもなく羅列して公開するだけのブログ、料理写真を羅列して公開しているにも拘らず御自分の備忘録である旨宣言しているブログが存在します。

こういったブログの目的、動機、意図を含む真意は未だ図りかねています。いずれ理解したいと思っています。

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