2018年8月19日日曜日

背景

別エントリで地方税、公共料金のクレジットカード納付について記していますが、その実現、普及には複雑な仕組みが必要なようです。
イシュア、アクワイアラ?何ソレ?
仕組みの理解抜きに云々するのはちょっと無理かな、と。本エントリで整理してみます。拙い理解です。不十分な点、誤りはご容赦頂きつつ、随時加筆修正していきます。
イシュア:クレジットカードの発行会社。クレジットカードの会員を募集し、カードで決済された利用額を会員に請求、銀行口座から引き落とし。
アクワイアラ:加盟店契約会社。加盟店を募集、管理。加盟店から売上データを受け取り、カード決済された利用額を加盟店に支払う。加盟店からは手数料をイシュアからは口座引き落とししたカード利用額を徴収
平成18年の地方自治法改正で指定代理納付者制度が定めらました。地方税、公共料金の納付にクレッジトカードを利用できるようにするために定められた制度のようです。

総務省の
地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書(本文)
に拠れば、平成18年当時は、
現行の指定代理納付者制度については、地方公共団体と納入義務者、 指定代理納付者たるクレジットカード会社(イシュア兼アクワイアラ ー)の三者を念頭に制度設計されている。
とのこと。
地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書(参考資料)
から図を引用すれば、
において、加盟店を地方自治体とし、イシュア兼アクワイアラー(=クレジットカード会社)のみを指定代理納付者とした態様を想定した制度ということでしょうか。

ところが、今日、クレジットカード決済の仕組みは複雑・多様化して実状にそぐわなくなった結果、クレジットカード納付ができないケースが現れるようになったとのこと。

下図のようにイシュアとアクワイアラーとが分離していたり、決済代行業者が介在するケースを指してのことでしょう。

そこで、これまの規定で、
”指定代理納付者が「交付し 又は付与する」クレジットカード等に限定された仕組み”
換言すればイシュアとアクワイアラーが同一であるクレジットカード会社発行のカードのみに限られていたクレジットカード納付を、
より柔軟に、即ち、
単独のアクワイアラーのみでも指定代理納付者として代理納付をできるようにするべき”
という見直しがなされ、現在、下図の仕組みに至っています。

図中、アクワイアラー(インターネットサイト)が指定代理納付者ということです。

以前の仕組みの実例を挙げてみます。クレディセゾンは2008年3月分から国民年金保険料のクレジットカード決済の取り扱いを開始する、との公開資料がありました。
「《セゾン》カード/UCカード」の公金決済拡充 国民年金保険料のクレジットカード決済を開始
これが旧来のイシュア兼アクワイアラー(=クレジットカード会社)のみを指定代理納付者とする制度の適用例かと。日本年金機構にある国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書(記入例)を見てみると、中程に決済に使用するクレジットカードを指定する欄があって”ご利用いただくクレジットカードに○印をつけてください。”とあります。このクレジットカード会社がイシュア兼アクワイアラーの指定代理納付者なんでしょう。



一方、現在の仕組みは、昨今クレジットカード納付が可能となった税金、公共料金の納付先である国税庁、地方自治体のサイトや国税クレジットカードお支払サイト愛知県県税 クレジットカードお支払サイトYahoo!公金支払いといった支払いサイトに示されている指定代理納付者を見れば適用されていることが判ります。

上記指定代理納付者はトヨタファイナンスとヤフーで占められています。別途クレジットカード支払いサイトを設けている国と都府県はトヨタファイナンスのみが、Yhoo!公金支払い利用して納付する地方自治体ではヤフーのみが指定代理納付者となっています。

確かに一つの指定代理納付者が多数、多様なイシュアに対応、様々なクレジットカードからの支払いをまとめて納付する形になっています。指定代理納付者が一社で仕組みが簡素化されていると言えなくもありません。しかしながら、見方をかえれば指定代理納付者の指定席化し、寡占状態になっていて競争原理が働かない状態にあるわけです。

ちなみに、現在の仕組みへと移行する大きな契機は、クレジットカード納付に対応することで寄付の促進を目論んだふるさと納税制度にあると推察しています。
「ふるさと寄附金制度」(いわゆる「ふるさと納税」)に係る事務の取扱いについて(平成25年9月13日付事務連絡)
で、クレジットカード納付を含む納付方法の多様化が推奨され、具体的な手続きも示されています。
上図の仕組みは、正に既に挙げたアクワイアラー(インターネットサイト)を指定代理納付者とした仕組みと相違ありません。その後、ふるさと納税という地方自治体が運営する通販システムは、納付の簡便さと返礼品、税額控除目当てに過熱していきます。

それと前後して平成25年の
地方公共団体の財務制度の見直しに関する中間的な論点整理
でも”複雑化するクレジットカード決済に対応すべく現行の指定代理納付者制度について見直しをすべき”との指摘は既にありました。

で、ふるさと納税の過熱化が呼び水となって平成27年の

地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書(本文)
を経て現在の仕組みに至った、と。こんな流れでしょうか。

以上の指定代理納付者制度についての予備知識を前提に次のエントリで元の話に戻ります。

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