2024年3月3日日曜日

愚弄

ちょっと、ドジャース 大谷の結婚報道について記します。報道そのものには、特段思う処はなく、まぁ、”おめでとうございます”で片付く報道でした。

この報道を見聞したのは2/29(木)のニュースウオッチ9でした。21:00から放送のNHKの全国ニュースで、その中でトップニュースとして扱われ、結構な時間を割いて報道でした。その後、岸田総理が政倫審に出席、答弁した報道が続いたわけです。当然、該報道の時間は、大谷の結婚報道によって切り詰められていました。

このタイミングについての”見えざる力”については、別途論考するつもりですが、本エントリではNHKによるこれら報道に対する姿勢について記します。

上記ニュースの取り扱い方からすれば、NHK側が位置付けたニュースバリューは明らかに、

大谷の結婚報道>>岸田総理出席の政倫審

であるのは間違いありません。”大した答弁内容ではない”NHKが判断したとすれば、この序列になるのかもしれません。ただ、一人の超人気野球選手の結婚と、自国の総理大臣によるウラ金問題についての答弁を天秤にかければ、どちらが重要であるか、いちいち記さなければならないのも情けない話です。 

多くの与党代議士事務所による、政治パーティ収入のウラ金化に関わるニュースが連日報道されています。それらを束にしても、野球選手の結婚の方を優位に報道すべき、というのがNHKの認識ということになります。

このNHKの認識が、”視聴者である日本国民は、自国の政治問題より野球選手の結婚の方がより高い関心を寄せる出来事だから”という理由によるものであれば、どうにも視聴者を愚弄した姿勢です。上から目線で、

──政治の話より大谷の結婚の方が知りたいニュースでしょ──

という押し付けに他ならないわけです。

或いは、政倫審における岸田総理の答弁に視聴者が関心を寄せているのを承知の上で、敢えて大谷の結婚報道を上位に扱ったのか。それはそれで、みなさまのNHKとしては

──視聴者のみなさまには大谷の結婚報道の方が重要です。そちらに関心を寄せて下さい。──

といった意図の表れなのか...それは誘導であり、NHKによる国民の白痴化です。

健全な民主主義の発達に資する

これが放送の担う重要な責務であるならば、何を優先して報道すべきは自明ですが...有料の国策放送であればこういった番組の構成も首肯できてしまいます。

2024年2月5日月曜日

荷担

他に方法はなかったのか、と。これではプリンタのビジネスモデルに自ら穴を開けるようなものです。互換インクの認容までではないかもしれませんが、結果として認容に荷担する力が生じています。

かつて米国の髭剃りメーカであったジレットに端を発する消耗品ビジネスこそがプリンタメーカのビジネスモデルであり利益の源泉です。(ジレットは現在、米国日用品メーカであるP&Gのブランドになっているようです。

”使ってもらって収益を得る”、これはプリンタ本体(髭剃り本体)の販売による収益性より消耗品であるインク(替刃)で利益を得るモデルです。場合によっては損失も受け入れ、とにかく本体販売数の増大を目指し、広く普及した後割高にも映る消耗品で投資を回収、持続的に利益を伸ばしていくわけです。

リース契約でオフィスに導入したコピー機の、コピー枚数に応じた課金制も、持続的に収益を得ていく上記モデルの一態様です。

このモデルの是非を云々する意図は特段ありません。実際、現在使用しているインクジェットプリンタ、カラーレーザプリンタでは、プリンタメーカによる純正インク、純正トナーを選択しています。

ところが、昨年年末の話です。使用頻度が年にニ、三度と数少ないインクジェットプリンタを使う機会が訪れたわけです。エプソンのPM-D870という年代物です。現在、主として使用しているのはカラーレーザプリンタであって、この程度のインクジェットの使用頻度ではとても新機種に更新する気にもならず使い続けています。

当然、該使用頻度ではインクノズルが詰まっています。今回は特に詰まりがひどいようで、ひたすらヘッドのクリーニングを繰り返しました。見る間にインクが減っていきます。

(結局、ヘッドクリーニングの繰り返しでは解消できず、エプソンのサイトを参照しプリンタを一晩休ませたら解消しました。

その後、ヘッドクリーニングで大量にインクを消費しましたから、追加でインクカートリッジを入手しようとした処、面倒な事態に遭遇した次第です。

インクカートリッジの一部商品の仕様変更について

必要なインクカートリッジの品番(IC6CL50)を確認した際、上記リンクに行き当たりました。なんでもカートリッジに使用している電子部品が入手不可となり仕様が変更になった旨、記載がありました。これがまたややこしいわけです。

IC6CL50はインク六色のセット製品で、

黒:                ICBK50
シアン:            ICC50
マゼンタ:          ICM50
イエロー:          ICY50
ライトシアン:      ICLC50
ライトマゼンタ:    ICLM50

といったインクで構成されています。これが各々、

黒:                ICBK50A1
シアン:            ICC50A1
マゼンタ:          ICM50A1
イエロー:          ICY50A1
ライトシアン:      ICLC50A2
ライトマゼンタ:    ICLM50A2

に変更されるとのこと(朱の文字色は分かりやすくするためです)。これだけであれば後継品を使えばいいわけでどうということはありません。ところが、この後継品を使うことで様々な問題が発生することがわかりました。インク残量が少なくなった時、これまで表示された”インクが少なくなりました”は表示なしになり、インク終了時の”インク残量が限界値を下回りました。”が”インクカートリッジを正しく認識できません。”になるようです。それだけならまだしも、更に説明を読み進めると、現在使っているPM-D870は本体のファームウェアの更新が必要になる場合があるそうです。

本体のファームウェア更新について

上記のプリンターにて変更品のインクカートリッジをご利用の際は、本体のファームウェアの更新が必要となる場合がございます。
お客様ご自身での更新作業はできません。
「引取修理(ドアtoドア)サービス」にて、お客様のプリンターをお預かりのうえ、当社サービス拠点にてファームウェアの更新作業を行います。
なお、更新に掛かる作業費、および、本体の配送に掛かる費用は無償で対応いたします。

引取修理って...このことを知ったのは12月28日です。これではプリンタが手元に戻ってくるのは年を越えたエプソンの正月休業明けです。ファームウェア更新の要不要は、PM-D870で現在使用しているファームウェアのバージョンに依るとのことで調べてみると、

2006年発売プリンターの一部における、本体のファームウェア更新について

該当していました。ファームウェアの更新を行わない限り上記後継品のインクが使えないことが分かりました。更にサイトの説明によれば、ファームウェアを更新しても後継インクのライトシアン、ライトマゼンタは使用できないとのこと...使用可能なインクは別途エプソン直販限定で販売って...いやいや、こっちは追加のインクカートリッジを購入して直ぐにでも印刷したいわけですよ。何せ12月28日です。

結局、現在使っているPM-D870ではファームウェアの更新が必要で2色のインクについてはエプソンの直販でしか入手不可ということです。

そうなると、それ程の手間と時間をかけて純正に拘る必要もありません。家電量販店にズラッと並んでいる互換インクを購入して無事用件を済ませた次第です。

元々、純正インクの継続生産を困難にした電子部品は、カートリッジ内のインク残量の管理に使われていただけでなく、互換インクの製造を制限するような役目も担っていたのでは、と想像しています。プリンタメーカにとって互換インクは苦々しいことこの上ないはずですから。

その部品が入手困難になって、つまりそれが仇となって、純正インクから互換インクの選択へと舵を切らせる結果となった、というのもなんだか皮肉な話です。

ところで、冒頭に記した、このビジネスモデルの端となったジレットですが、互換替刃は販売されていたのでしょうか。ジレットの髭剃り本体に適合するジレット以外の他社が製造した替刃です。インクジェットプリンタの互換インクやレーザプリンタの互換トナーほど互換品が氾濫しているようには見えません。アマゾンで検索してみると、確かに以下のような注釈を記した互換替刃は販売されているようです。

【警告イベント】交換用ブレードはジレット製品ではなく、ジレット社の正規品でもありませんのでご注意ください。本製品はジレットとの併用に適していますが、ジレットがスポンサーまたは承認したものではなく、関連ブランドでもありません。

ただ、それでも少数です。プリンタの互換インク、互換トナーほど一般的に出回っているようには見受けられません。価格はいわゆる純正品の1/2〜1/3にも拘らず、です。

収益性の差、プリンタの互換インク、互換トナー事業は儲かるが、髭剃りの互換替刃は儲からない、というのが合理的ではあります。もう少し掘り下げてみます。

その前に、これら互換インク、互換トナー事業はエコとかリイサイクルといった語を散りばめていたとしても、フリーライドであることには間違いない、と考えています。技術の幅広い自由な利用を制限する特許法から、自由で公正な競争を担保する独禁法からの二つの視点があることは承知しています。純正インクによる市場の独占は認められない、というのが法的な現状と捉えています。

さて、髭剃りの替刃とプリンタのインク、トナーの大きな違いは後者のカートリッジの存在です。これが互換インク、互換トナー事業への参入を許すことになった最大の理由です。

消耗品とは言え、消耗したのはカートリッジ内のインクやトナーであってカートリッジはまだ使える、それならインクやトナーを補充すればいい、というのが互換品出現の発端かと。又、当初、上記カートリッジには残存インクを管理する機能が付与されておらず、形状が該当プリンタに適合する当にインクの容器だった記憶があります。この容器を模倣して製造することは現在より困難ではなく、このことも互換インク市場の拡大に繋がったはずです。(トナーについてはおそらく複写機に使用されてきた互換トナーからの話になって事情がやや異なります。)

して、互換品を純正品の1/2〜1/3の価格に設定しても事業として収支が合う、という揺るぎない事実が根底にあるわけです。換言すれば、消耗品であるインクの利益をプリンタ本体の開発費他の損失に充てるビジネスモデルとは云え、インクを購入する側の立場からすればこの上なく高額な消耗品という印象が否めない、ということです。

互換インクメーカがフリーライドで跋扈する隙は、ここに生まれています。勿論、プリンタメーカがこの状況を指を加えて黙っている訳はなく、これまで特許訴訟等でフリーライドの排除を試みてはいるものの、必ずしも上手くいっていないのが実状です。

家電量販店で見かける互換インクの氾濫がその証左です。特許法で保護される技術の独占と、独占禁止法に依拠する公正な競争のせめぎ合いの具現化が見て取れます。必ずしも上手くいっていないのが実状です。現在、この綱引き状態は互換インク側が優勢ですが、この状態が永続していくものなのか興味深い処です。

実際、価格が同じであれば互換インクより純正インクを選択する、これは間違いない原則です。従って、純正インクの価格を互換インク並に設定すれば互換インクは確実に一掃されます。全くの同一価格ではなく、ある程度であれば互換インクとの価格差は許容され、ユーザーは純正インクを選択すると考えます。その程度は不明ですが、現在の互換インク価格の2〜3倍の純正インク価格が手放しで受け入れられていないのは明らかです。

どの程度の価格差になるとユーザーは互換インクから純正インクへ、純正インクから互換インクへと乗り換えるのか、明確な線引きはできません。以前の経験(成功/失敗)や評判、私用/公用、使用頻度といったユーザーの多様な属性が選択を左右するであろうことは記すまでもないことですから。そうであっても、選択の自由の下、価格や信頼性、性能を考慮した結果であることには相違ないはずです。

ここで少し横道に逸れて余計なことを記します。

類似の話は至る処に転がっていて、少し前に家電量販店の冷蔵庫や洗濯機といった生活家電エリアを訪れてみた際、国内メーカの製品と海外(中国)メーカの製品がコーナを隔てて展示してありました。両者のサイズや機能は全く重なっているわけではなく、単身、夫婦二人、大家族向け等、対象としている購入者層の棲み分けがざくっとできているようでした。それでも重なる製品も多く、そうなると同クラスの製品で[日立、パナ]、[三菱]、[東芝、シャープ]、[ハイアール、ハイセンス他海外メーカ]といったグループが何を理由に選択されるのか、といった話に行き着きます(アクアの位置付けは今ひとつ判じかねています)。極端には、[日立、パナ]を選択する購入者が[ハイアール、ハイセンス他海外メーカ]に選択を転じることはあるのか、あるとすればそれはどういった条件なのか...

故障して機能不全に陥ると生活に不便を来す、白物と称される冷蔵庫、洗濯機といった生活家電と、生活の娯楽的質を豊かにする、黒物と称されるAV機器で事情が異なるのは確かです。現時点では、白物についてはやはり耐久性、信頼性の観点から[日立、パナ]、[三菱]、[東芝、シャープ]が優先的に選ばれている印象です。壊れると面倒な事態になる白物では価格より信頼性や不具合時の対応が選択の優先条件になっているのが現状かと。

そこから遡って、かつて日本国内で薄型テレビの大画面化競争が激しかった時期がありました。液晶テレビだけでなくプラズマ方式のテレビも競合品として共存していた頃です。その辺りからポツポツとサムソンやLGの液晶パネルを採用してテレビに仕上げた製品が市場に出回り始めた覚えがあります。低価格で大型の液晶パネルを海外から入手することで大画面テレビを製品化する障壁は大きく下がる、と聞いていました。

そういった割安な大画面テレビに国内の有力AV機器メーカはどう対抗したか。明らかに不要と思しき機能を付加したり、信頼の日本製障壁は大きく下がる、と聞いていました。


そういった割安な大画面テレビに国内の有力AV機器メーカはどう対抗したか。明らかに不要と思しき機能を付加したり、信頼の日本製とかカメヤマモデルといった語で安価品との価格差を埋めようとしました。3Dテレビなどという筋悪もありました。何処に行ったのでしょうか。


この辺りから国内の有力AV機器メーカの凋落が始まりました。シャープは現在台湾資本の会社となり、東芝は粉飾やら原発やら様々な理由で満身創痍、テレビ部門を中国資本に売却しています。現在国内で販売されているテレビは、組み立てメーカーを問わず、その基幹部品である液晶パネルの殆どは中韓メーカからの調達品です。とかカメヤマモデルといった語で安価品との価格差を埋めようとしました。3Dテレビなどという筋悪もありました。何処に行ったのでしょうか。

この辺りから国内の有力AV機器メーカの凋落が始まりました。シャープは現在台湾資本の会社となり、東芝は粉飾やら原発やら様々な理由で満身創痍、テレビ部門を中国資本に売却しています。現在国内で販売されているテレビは、組み立てメーカーを問わず、その基幹部品である液晶パネルの殆どは中韓メーカからの調達品です。

これは、単に価格差が支配的要因だっただけではなく、残念ながら価格性能比で大差をつけられて、国内液晶パネルの開発製造が総崩れとなった結果ではあります。

白物は低価格品に抗って、未だ国内メーカが踏ん張れているというのが現状でしょうか。黒物はOEM品とまでは言いすぎですが、中韓メーカからの基幹部品の組み立て製品ですから選択の理由が不明確になってしまいました。

更に、選択理由としての価格について話を飛躍させます。

上記、プリンタのインクや白物家電では主たる目的(印刷/洗濯、冷蔵等)がほぼ同程度でも、付随する信頼性(純正、互換/国産、海外製)と価格のバランスが購入者の選択理由でした。

ではこれを拡張して合法/違法ではどうでしょうか。


(追記していきます)

2023年10月13日金曜日

便乗

ここ二、三日の話題と言えば、藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖)の全八大タイトル制覇でしょうか。史上初の快挙、明るいニュースであり、更に言えばメディア自身への延焼の恐れが小さいことから、ジャニーズ性加害事件を抑えて大きく報じられていました。

将棋について特段の思い入れはありませんが、タイトル制覇について称賛し、素直に敬意を表したい処です。ただ、目に留まるニュースは、多くが対局以外の内容です。何食べた、時間はどうだった、師匠を含む関係者のコメント、地元の歓喜、過去の戦績、偉業の称賛...野球、ラグビー、サッカーといったスポーツならばそれこそ試合そのものの解説が主です。

殆どが素人の視聴者にも解り易い解説というのは無理難題かもしれませんが、それがメディアの責務ではないかと。ノーベル賞受賞を伝えるニュースも同様ですが、報道する側の力量不足が最も印象に残ります。

さて、該快挙で藤井聡太竜王・名人の国民栄誉賞受賞が決定したわけです。年齢的にまだ尚早という声は勿論上がるでしょうが、今後、政権に対する支持率低下や選挙前になればそういった気運がどこからともなく湧いてくるはずです。

政治に無関係な個人や団体による快挙の政治利用は古今東西ありましたが、ここの処かなり判りやすいというか露骨になった感を禁じ得ません。

2023年9月23日土曜日

尚更

悪魔の証明を求める意図は毛頭ないのですが...

ジャニー喜多川氏の性加害問題に対する「マスメディアの沈黙」を取り上げたNHK クローズアップ現代について、論評が文春オンラインにありました。

スポンサーや事務所への配慮で「ジャニーズは触れないということですよ」…NHK「クロ現」が“テレビの沈黙”を検証#1

「ジャニーズが使えなくなったら番組ができなくなる」「視聴者獲得のため」…テレビ関係者40人が語った“ジャニーズ性加害問題”
#2
ジャニーズ関連のものはすべてアンタッチャブルにしていくと。━━
━━重大に捉えていなかった。━━
━━思いが至らなかった。━━
━━視聴者獲得のために清濁あわせのんでやってきた。━━

そういった文言が並んでいて、まぁ、忖度が働いて性加害を黙認、口を噤んできたわけです。この性加害は反社会的な犯罪行為ですが、それでもジャニーズ事務所との関係を維持するために該犯罪行為を座視してきました。

そうであれば放送を含むマスメディアに圧力を加え得る個人や法人、団体に対しては、関係維持や規制を避ける目的で、極めて容易に忖度が起きるであろうことが推認できます。犯罪行為ですら看過し関係維持を図ってきたわけですから。対象が適法の範囲内になら忖度によって報道の中立性や客観性を毀損することなど全く抑制できないのも然るべしです。

ではその忖度の対象は、となるわけですが、順当には監督官庁と記者クラブを置いている取材対象が該当します。

そう考えた端緒も、日銀金融政策決定会合についての報道でした。以前から日銀の金融政策についての報道に触れる度、政策の肯定を前提とした論調、という印象を拭えませんでした。批判的な言及はなく、肯定した上で、その結果何が起こるか、といった解説をしばしば見ます。迎合的な雰囲気を感じるわけです。(勿論、署名入りの記事では是非を問い、批判的な意見もあります。)

他、放送行政を司る総務省は言うに及ばず、報道資料の提供元、取材ソース源、である 各省庁、都道府県警、勿論総理官邸といった、報道機関に対して力関係や上下関係がある場合、忖度を排除することは不可能です。

それは、報道しない権利を含めた編集権を利用した報道機関の自主的な忖度ですから、外部からの報道統制ではありません。従って、報道の自由は保たれている体にはなっていますが...

毎年、7-8月辺りになると、日中戦争や太平洋戦争を含む戦争関連の番組が放送されれます。その中には軍国教育やプロパガンダ、思想統制に絡んで旧日本軍部と報道機関の関係を題材にしたものも散見されます。

報道機関はそういった番組の中で、国威発揚、戦意高揚の情宣活動を、概して軍部に強いられたかのように描かれています。保身や権益のため忖度して協力したようには決して描かれていません。

報道機関ですら言論統制を強いられていたのであれば、戦後、その痕跡というか記録が詳らかにされるのが自然です。そういった話は(反戦主義だったか否かはともかく)桐生悠々程度しか寡聞にして知りません。報道機関が進んで戦争協力した、というのが実の処だったと推測しています。

この構図は今般のジャニーズ性加害事件とそのまま該当しますし、犯罪事案ですら忖度して座視しているわけですから、犯罪でなければ尚更長いものに巻かれるのも自明です。

民主主義社会の護持や健全な発展、或いは公益への寄与のためには、報道の客観性とか不偏不党、公平性が不可欠とされていますが、力、つまりは利害関係次第でメディア忖度し自らが容易に手放す、ということです。木鐸についている舌(振り子)は、鳴らすべき側の手で容易に引きちぎられます。

この、おそらく避け得ない保身とか組織防衛の姿勢の下、稀に冤罪を取り上げた番組がNHKで放送されます。精査してみると、掘り下げ不足だったり、茶番に映ることも少なくありません。ある種のガス抜き、溜飲を下げるため?といった疑念を払拭できないでいます。

例えば、少し前にNHKから

「“冤罪”の深層~警視庁公安部で何が~」

の番組名で大川原加工機事件を取り上げた調査報道が放送されました。ウィキペディアに経緯がありました。

大川原化工機事件

この経緯と、検索で知り得た他のソースからの詳細で、何が取捨選択されて該番組が制作されたのか見てみます。下図は上記番組で警視庁公安部の組織図の一部です。外事第一課第五係が中心となって、スプレイドライヤの不正輸出容疑で大川原加工機の捜査に当たりました。管理官や係長ら捜査幹部が、警部補など約20人の捜査員を指揮していたとも放送されていました。


又、該装置を輸出規制の対象とすることに当初難色を示していた経産省が強制捜査を容認する下りがありました。ここでは公安部長の働きかけが仄めかされています。

更に、
第五係幹部らは『お前の“できません”のひと言でダメにできる案件じゃないんだよ。警視総監までいっている話なんだから』と発言していた
といった証言もありました。

何人もの捜査を差配する権限を持つ警視庁の上級幹部が登場しています。

この事件は、不正輸出の法的根拠となった外国為替及び外国貿易法違反については東京地検の公訴取り下げで終結しました。それでも地検の担当検察官は
当時、起訴すべきと判断したことは間違っていないと思うので謝罪の気持ちはない
とコメントし、取り下げに至った経緯は闇の中です。一部には、
東京地検には、詫びるどころか『本当は立件できたのに取り下げてやったんだ』というような傲慢な雰囲気を感じましたね。
といった声もあるようです。いずれにせよ本事件に対する地検の対応は公訴取り下げの事実を除いて、上記番組では全く触れていません。不自然な印象を拭えません。

本事件を知る警察関係者は、捜査を担当した公安部外事一課第五係の係長、現場捜査員は勿論、第五係担当の管理官、外事一課長、公安部長、警視総監でしょうか。加えて該外事一課は、大川原加工機の外国為替及び外国貿易法違反の捜査、立件で警察庁長官賞と警視総監賞を受賞していますから、顕彰の選考関係者も事件について知り得る立場にあります。

この中、番組内でNHKが接触して何らかの応答のあった警察関係者は、(捜査当時の)公安部長、第五係の係長、及び、大川原加工機に有利な証言をした現場の警部補が二人、捏造に関わったとされる現場の警部補が一人です。(真偽を確認できない匿名の警察関係者は除きます

ただ、
元公安部長:コメントする立場にない
第五係の係長:うるさいな
という応答は実質応答なしです。前記第五係幹部らの発言にある警視総監は勿論、該第五係幹部からも、外事一課長、第五係担当の管理官も応答なしです。加えて、上記警察庁長官賞と警視総監賞は後に取り消しとなりましたが、捏造事件が顕彰に至った選考過程の検証も不明のままです。

結局、現場の二人の警部補が事件の捏造を証言し、別の警部補が捏造した弁解録取書の廃棄について過失を証言と。具体的な証言はこんな処でしょうか。

つまり、公訴取り下げに至った本冤罪事件を、捏造であっても過失他であってもあくまで現場レベルでの出来事に矮小化して収束させようという意図があったのでは、ということです。その意図も実は警察と検察に加えNHKも打ち合わせた結果ではないか、という疑念も抱いています。

加えて、大川原加工機の社長などが本冤罪事件について国と東京都に対し賠償を請求している裁判で、捜査と起訴に関わった担当検事による証言が報道されています。
原告側の弁護士から長期間の勾留や、その間に1人が亡くなったことについて謝罪の気持ちがあるか問われると「当時、起訴すべきと判断したことは間違っていないと思うので謝罪の気持ちはない」と述べました。

一方で、起訴取り消しとなったことについては「検察官として真摯に受け止めるべきだと思う」と話しました。
”間違っていない”ということは、検察官一体の原則に反する文言ですし、何より再び冤罪を生むことに躊躇しない、ということです。となると、後段の”真摯に受け止める”は起訴取り消しにならないよう、もっと粗のない筋書きを組み立てる、と解することができます。

本冤罪事件に関わる、警察、検察の責任ある立場の関係者からのコメントは何処にも見当たらず、上記証言がそれらしきコメントになります。

番組のタイトルが「“冤罪”の深層~警視庁公安部で何が~」ですから、上記検察官の”間違っていない”という文言を番組で取り上げないのは、警察官の文言ではないという理由が通るわけです。

以上を鑑み、総合的に判断すると、



(追記していきます)

2023年9月18日月曜日

幻想

 残念至極です。

信頼できる政府というものは空想上の産物なのかもしれません。各々についていちいち言及しませんが、マイナンバーカードに纏わる数々のトラブルを見聞してのことです

まぁ、例えば年金記録問題や、新型コロナが蔓延した際の新型コロナウイルス接触確認アプリ(cocoa)の不具合等、政府主導の大規模システムで起こった過去のトラブル事例を思い起こせば、案の定といった処で、違和感も意外感も抱きませんでした。

言い換えれば、マイナンバー関連でこれまで露見した問題は、過去の事例を検証していれば殆どが回避し得たトラブルである、ということです。検証しない、顧みない、点検しない...お粗末の一言です。

行政(人、組織、施策)が前提としている無謬性こそが過ちを繰り返させている根源なんでしょう。もはや、旧くから継承されてきた日本の伝統的体質と言っても強ち外れではないと思っています。

過ちて改めざる、これを過ちという

当にこの言葉通りですが、更なる言及は別の機会にします。冒頭の”残念至極”は、上記体質に対してではなく民主主義システムの効率化への道が閉ざされた、少なくとも遠ざかったことに対する失望感です。

マイナンバーカード総合サイトによれば、

マイナンバーカードとは、マイナンバーが記載された顔写真付のカードのことです。
マイナンバーカードは、プラスチック製のICチップ付きカードで券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーと本人の顔写真等が表示されます。
本人確認のための身分証明書として利用できるほか、自治体サービス、e-Tax等の電子証明書を利用した電子申請等、様々なサービスにもご利用いただけます。

とあります。この全く個人に帰属する唯一無二であるはずの情報を、住民票や健康保険の情報、公金受け取りに使う銀行口座と紐付けることで多様な公的サービスに活用する、という目論見でした。自動車の運転免許証にも、という話もあったかと。

ところが、この紐付けが過ったケースが散見されています。無二のマイナンバー(個人番号)が割り当てられた個人に、例えば同姓同名の他人の住民票や健康と、保険の情報がリンクしていたり、当人名義ではない銀行口座が登録されていたり混乱を招いているわけです。

そうなると、本人確認のツールとしてマイナンバーカードの信頼性が失墜するのは、まぁ、当然です。例えば、マイナンバーカード記載の情報と、マイナンバーカードを利用して発行した住民票の情報、正しいのはどちら?といった話になります。

「私たちのふだんの暮らしでは、免許証やパスポートが、身元確認の役目を果たします。では、顔が見えず、成りすましも簡単なオンラインの世界で、身元確認や本人確認をどうするのでしょうか。その役目を担うのが電子証明書を内蔵しているマイナンバーカードです。それゆえに、マイナンバーカードは『デジタル社会のパスポート』と呼ばれています」

上記は、岸田総理の記者会見での発言のようです(R5.8.4 総理官邸)。言葉通りに受け止めるならば、マイナンバーカードが本人証明を担保する力は、保険証は言うに及ばず、免許証やパスポートを遥かに上回って最強です。

この本人確認に対する絶対的な無謬性は、民主主義社会を成立、維持するための礎である選挙に欠くべからざる前提です。マイナンバーカードについて巷間には賛否がある中、カードの取得をアメとムチのような施策で牽引してきました。前者はマイナポイントで国民の頬を張り、後者は現行の保険証廃止でカードの取得を促すというか強いるというか...

この辺りの話を見聞していると、

何だか程度が低いなぁ、真っ先に選挙に活用しないのは何故だろう。意図的か?

という疑問が生じました。健全な民主主義社会構築に資する格好のツール、というのが初めてマイナンバーという制度を知った時の素直な印象ですから。マイナンバーと健康保険証や運転免許証とのリンクは確かに社会の生産性向上には寄与しますが、生産性だけでなく社会の質、民主主義社会の健全性を高め、より賢い社会を構築するためなら、マイナンバーの選挙への活用が優先されて然るべきです。

マイナンバーカードの支持/不支持を問われた時、小手先の生産性向上のためだけに導入するのであれは失望し不支持です。社会の質を高める目的で、選挙で優先的、積極的にマイナンバーカードを活用しようという姿勢が覗えれば支持、というのが私の立ち位置です。残念ながら、現状では上記の如く失望感が否めません。

総務省から、”いろいろ便利になる”とアナウンスされつつも、マイナンバーカード選挙に活用しようという話は噂ですら聞きませんまぁ、現在の混乱を見れば...賢明なんでしょう。

ただ、選挙の度に低迷し続ける投票率が嘆かれてきた中、選挙制度にネット投票の導入を求める声は少なからずありました。投票行為に対する時と場所の制限を緩和し、より軽便で低コストの選挙を実現するための手法としてネット投票とかリモート投票が提言されてきたわけです。この、投票に対する時と場所の制限緩和が、幅広い民意を政治に反映させるために必須であることは間違いない処です。(ただ、幅広い民意が政治に反映された結果、例えば、問題先送り、大衆迎合政治、国家主義社会、統制社会を自らが選択してしまう危険を排除できないのは勿論です。民主主義による選択と最善の選択は必ずしも符合しないことは記しておきます。)

かなり以前、該このようなインターネットを介した投票に否定的な声として

”なりすましを排除できない”

とか、

”全ての有権者に洩れなくネット投票が可能なわけではない

といった意見を見た憶えがあります。

改めて、ネット投票を巡る現況を検索してみた処、意外な動きがあることに驚きました。

インターネット投票の最前線
実現できるか 山積する課題

上記リンク先によれば、つくば市が2024年10月の市長選挙と市議会議員選挙で、全国初のネット投票の実用化を目指している、とのことでした。全く存じませんでした。この結果は、公職選挙全般へのネット投票導入の試金石です。どのような課題解決を経て実現されていくのか、強い関心と共に観ていきます。



(追記していきます)

2023年9月10日日曜日

保身

テレビ朝日系の番組が視られなくなったようです。当地では名古屋テレビの放送が映らないということです。といってもHDDレコーダでは受信できていますから、テレビ〜レコーダ間接続の接触不良なんだろうと。

で、視聴できずとも何ら困らないわけで、まぁいいか、と放置しています。巷間、ジャニーズ事務所の性加害事件が騒ぎになっていますが、その加担責任についてテレ朝がアクションを起こし出すまでは打っ遣っておくかもしれません。

それに対し、さすが天下のNHKです。テレ朝系以外の他の民放の映像が不安定になっても安定して放送が映ります。

NHKの担っている役割を鑑みれば、特段の意外感もなく腑に落ちるます。なんと言っても、体制の意向に沿って、煽動や誘導、操作といった情宣活動の重責がありますから。

この情宣活動を担う体制の尖兵というメディアの本質に着目すると、戦中戦後、ジャニーズ事務所全盛期と現在、両者には通底した報道姿勢が伺えます。この情宣活動は、戦時中であれば、国益優先で国威発揚、戦意高揚を企図したもので、事実や公共の福祉より重視していたのは間違いありません。

この情宣活動を担う体制の尖兵というメディアの本質に着目すると、戦中戦後、ジャニーズ事務所全盛期と現在、両者には通底した報道姿勢が伺えます。

戦時中、NHKは軍部に追従する戦争協力団体でした。戦後は自らの過去の情宣活動を棚上げした、日中戦争、太平洋戦争関連の番組がてんこ盛りです。毎年、7月下旬〜8月6日、8月にかけて、以前の番組の再放送と共に、新たな戦争関連の番組が放送されています。ほぼ全ての番組が、NHKは旧軍部とは一線を画していた、若しくは協力を強いられたかのような雰囲気を漂わせた作りになっています。

戦争協力団体としての過去を隠蔽、つまり、軍部と距離を取っていたかのような戦争関連の検証や記録番組で、戦時下におけるNHKの情宣活動を塗り潰そうとしているのでは、といった印象を抱くわけです。過去の行状の改竄とも言えるかと。

同様の印象を今般の性加害事件の報道姿勢に感じた次第です。一連の報道では、”メディアの責任”とか、”自省しなければならない”といった文言を耳にします。こういった免罪符的な言葉を盾に、飛び火させない、自らへの糾弾の視線を逸らすための、該事務所に対する執拗で強硬な姿勢にも映ります。

間違いなく、女衒、ポン引き、遣り手婆、幇間は存在していたと考えます。”自省しなければならない”を言葉通りに受け止めるならば、叩きやすい故人だけでなく、ジャニーズ帝国隆盛の当時、強大な力を与える結果となった帝国への協力者も詳らかにされるべきです。

身を切っての全容解明が求められるわけですが、上述の戦争関連の番組制作姿勢に照らし合わせれば、全容は闇の中というのが予測される結末です。今般の事件の端緒となったBBCの報道と同じくガイアツに頼らざるを得ないのも嘆かわしい話です。

2023年8月15日火曜日

台風

台風7号通過まで時間があったので...

こちらの方々も嵐が通り過ぎるのを待っているところでしょうか。

エッフェル塔前でポーズ 自民党女性局の仏研修
で、公費を使った観光旅行だとか、3泊5日の日程中で「研修」は6時間、娘を帯同していたとかで参加した女性議員が
批判に晒されています。SNSで公開した、エッフェル塔前の記念写真?が端緒になりました。

自身の承認欲求を満たすためかどうか存じませんが、”アタマが悪い”以外の言葉が見つからない愚行です。

批判を抑えるためでしょうか、参加した
松川某が、
視察自体は、というか研修自体は有意義だったと思うんです。教育省の方からは3歳からの幼児教育の義務教育化についてのこれまでの経緯や成果を伺うことができて、大変参考になりましたし、また保育施設であるとか少子化対策、そしてまた政治における女性活躍について上院や下院の方とも有意義な意見交換ができたと思っています
今井某が、
無駄な外遊ではありません
と応えて更に馬脚を現してしまいました。
有意義だった、無駄ではなかったと、研修の正当性を主張している事自体が自己弁護に聞こえます。自らがいちいち明言しなければならない状態になっています。上記は主語を隠した自己評価にしています、本来は周囲や有権者による客観的評価であるべきです。

私には有意義だった/無駄ではなかったが、有権者や日本社会に有意義だった/無駄ではなかったかは判らない、が正確な処かと。

研修の結果を反映した政策によって、例えば幼児教育が義務教育化され、出生率が上昇して評価できるわけです。換言するならば、現時点ではそういった社会の変化もなく、それに繋がる施策、提言も示されていませんから、
6時間の研修でも200時間の研修でも、公費による研修だろうが私費による研修だろうが無駄
ということです。

ちなみに幼児教育について、その重要性(有用性や費用対効果)について見聞してから20年かそれ以上経っています。今更フランス行ってどうのこうのの話ではありません。

少子化については未だその原因が明確になっていません。原因不明なまま少子化対策と銘打って施策を講じても、明後日の方向を向いている確率が大です。予算をつけて何か事業を行うための、手段の目的化にすら映る、というのが正直な印象です。