2019年10月25日金曜日

模範

この処、新瑞橋付近をよく通ります。で、一部界隈で絶賛高評価のとんかつ店 井筒に立ち寄ることができました。周回遅れの話です。

初めてのとんかつ店で何を頼むか...考えるまでもなく普通のロースカツ定食です。供された膳はキャベツ、ポテサラの添えられたトンカツ、白飯、味噌汁、漬物とオーソドックスな構成です。ソースは別添でした。

食べてもいないのに何ですが、上ロースやもち豚ロースといったプレミア?上位?のトンカツを頼まずとも、美味しいとんかつでした。カツはやや強めに揚げられていますが、これは短時間で揚げて旨みを閉じ込めるためでしょうか。そのためかどうかは判らないものの、ロースカツの旨さの本質である脂の美味しさがしっかりと在りました。赤身部分も柔らかく口腔内が豚の旨みで溢れます。

ロースカツの場合、脂身部分の柔らかさと対照的に、赤身部分にぱさついた歯応えを感じることが偶にありますが、そのようなパサツキ感のないジューシーな風味でした。

近年、特別な銘柄豚を、例えば低温長時間で揚げるなど、従来のトンカツの範疇に留まらない特別なトンカツを提供する店が話題になります。この店はそういった振りかぶったトンカツ店ではなく、あくまでも昔からの奇をてらわないトンカツ店です。そういった肩肘張らない店の中で、とんかつ 沢井(瀬戸 山口)、とんかつ 勝義(川崎)や八幡屋(名古屋 荒畑 持ち帰り)と並んで、ほぼ最上位に位置付けられるのではないかと。いぶし銀のようなトンカツ店です。

ちなみに、品書きにはカツ丼の記載はありません。店の矜持が窺われます。

2019年10月20日日曜日

選別

データをマネタイズ
何だか煙に巻くような文言ですが、膨大なデータを収集、加工、分析し、そこから新たな情報を作成、編集して販売する事業と理解しています。用途は採用、販促、製品開発、需要予測あたりでしょうか。選挙活動や、政策立案、世論誘導向けの情報もあるのだろうと。

いわゆる名簿屋も該当するのでしょうか。新小学生へのランドセル、新中学生への学生服や学習塾、新大学生への賃貸住宅、新成人へのスーツや晴れ着、そういったDMや電話セールスの対象となる属性情報の提供も情報の収益事業ではあります。個人情報保護法の施行以降は殆ど見聞しなくなりました。これは当に個人情報の売買です。データのマネタイズではありますが、今関心が寄せられているマネタイズ事業とは異なるものです。

単純には、例えば、購入したい自動車の色について非常に大規模なアンケートを行い、赤、白、グレーの回答比率が利用できれば各色の生産計画立案を支援できます。個人情報レベルまで踏み込まず、特定の回答をした個人の集合、或いは、特定集合の回答のレベルから動向を分析し、それを加工して顧客に有用な情報として販売する、そんなイメージで捉えています。

で、今衆目を集めているリクルートキャリアによる就活生の内定辞退率予測データの販売について考えてみます。

内定辞退率予測データは、ある企業に内定した就活生の個人情報とサイトの行動履歴から算出されるようです。この二つのデータを、昨年度(2018年度)の内定者辞退動向から構築したモデルと突き合わせ、AIでムニャムニャすると、当年度の内定者が辞退する確率を求められるとのこと。内定者辞退率の予測値を考慮して採用企業が内定者数を増減すれば、採用予定数達成の精度向上が見込めるわけです。
リクナビ問題「同意があれば万能」論を見直すべき…鈴木正朝教授が「思考停止の議論」に危機感
この時、リクナビに登録する際、プライバシーポリシーに同意した就活生の個人情報だけでなく、約8000名の該ポリシーに同意しなかった就活生のデータも内定辞退率予測データの算出に利用されていることが問題となっています。加えて、プライバシーポリシーの内容自体にそもそも不備があるという指摘や、就職活動に不利に働く事業への個人情報の利用は同意の有無に関わらず不適切との批判あります。

こういった個人情報の取扱い、これはこれで十分問題ですが、個人情報をAIでムニャムニャして内定辞退率を予測する、事業そのものに胡散臭さを禁じ得ません。

予測のアルゴリズムは当然非公開ですから、このブラックボックス部分にAIを充てていますが、
”そんな大した予測やってんの?人力でテキトーに予測した数値で商売してんじゃないの?”
という疑念が生じるのは間違いない処です。

例えば、A大学の就活生が、B業種の会社B1社と、C業種のC1社、C2社から内定を貰ったとします。すると、この就活生は、業種BとCや、同業C1、C2を比較し、各社におけるA大学の位置付け、自身の希望を考慮して志望を序列化します。この序列化が合理的になされるならそこそこ妥当性のある内定辞退率が予測可能ではないかと。AI導入で予測値の信頼性を向上させるのが狙いなんでしょうか。

例えば、トヨタと日産、日立と東芝なら各々後者の内定辞退率が高いであろうことは容易に推測できます。では、トヨタと日立では?これは異業種の比較ですから、当人の希望や専攻に依って序列は変動します。が、それらの情報を鑑みれば合理的な序列化は可能ではないかと。果たしてAIを利用するほどの話なのか、甚だ疑問です。

まぁ、”AIが出した解です”として予測値を権威付ける一方、問題が起これば責任はAIに帰せることができますから、その辺にやたらAI利用を喧伝する理由があるのではないかと。勿論、憶測の域を出ませんけど。

そこから更に勘ぐると、この内定辞退率予測データの算出には、各個人の具体的な個人情報も利用していたのではないか、という疑義が生じます。これが、就職活動を支援する目的で就活生から収集した個人情報の目的外利用であることは明らかです。AIで予測”は、リクルートキャリヤによるこの目的外利用を表面化させない恰好の方便になっているのでは、という見方もできるわけです。

以下、少し詳細に予断を持って推量します。

新卒の学生は就活するに当たり、就職ポータルサイトであるリクナビへの登録がほぼ必須となっています。日本の就職情報分野において、リクナビはトップクラスのガリバー企業であり、換言すればほぼ独占状態にあるとみて間違いありません。日本の新卒就活生の就職に関わる個人情報、採用企業の採用に関わる情報のほぼ全てがリクナビに収集されているわけです。

就活生がリクナビに登録する際、どこまでの個人情報を提供するのかはよく解りません。ただ、
リクナビに会員登録するとできること
で、使える機能を利用しようとすれば、必要となる個人情報の登録を求められるのは当然です。住所、氏名、メールアドレスはもとより、OpenESを使えばエントリーシートや履歴書に記載する個人情報を登録することになります。加えて、入社志望企業の検索履歴、説明会やイベントの申し込み、参加状況、志望企業の優先順位、志望動機、内定状況といった情報があれば、内定辞退率の予測はそれほど難しい話ではなく、AI技術など使わずとも可能と考えます。

ただ、こういったパラメータから内定辞退率を予測することは、個人情報に手を突っ込むことを意味しますから、そこで、AI技術を活用したという体にしておくと。そんな処ではないでしょうか。

つまり、各個人の情報をプロファイリング、スコアリングすることで算出した内定辞退率を、恰もアルゴリズムを使って機械的に予測したかのように装っているのではないか、ということです。それは、いちいち記すまでもない個人情報の目的外利用です。

更に疑えば、特定就活生の内定辞退の可能性について、当該企業の採用担当者からリクナビへの照会すらあったかもしれません。採用予定枠を埋めると共に、できるだけ優秀な内定者を採りたい、人事の採用担当者からすれば、辞退予測は願ってもない情報です。

そのような照会が実際に行われていたか否か、知る由はありませんが、あったとしても驚きません。新卒者の就活支援より先行して拡大した転職支援の分野では、ヘッドハンティング、スカウト、引き抜き等と称される中途採用では、特定個人に焦点を当てた転職が主です。少なくとも転職支援会社には、転職希望者の意向や動きは筒抜けではないでしょうか。

転職支援の拡大を受けて巨大化した新卒者の就活支援事業ですから、個人情報は果たして適正に保護されていたのか、或いは、情報を取り扱うリクナビ自身の意識がどうだったのか、不信感は払拭できません。

さて、就活〜就職という、狭い年齢層に属する、極めて大量の人員がほぼ同時期に入社するというイベントに既視感を抱きました。その後の人生や生活に大きな影響を及ぼす、就職という目的に向かう際、膨大な個人情報が収集される点も同じです。

それは、大学受験の際の志望校決定の仕組みです。大学入試センター試験では、ほぼ全ての受験者の自己採点結果を大手予備校が集約します。受験生は予備校の示す判定結果を鑑みながら志望校を決定しています。大手予備校とは駿台、河合塾、代ゼミといった三大備校に東進を加えた辺りでしょうか。こちらも人生に大きな影響を及ぼす大学入学という目的に向かう際センター試験の自己採点結果という明らかな個人情報が収集されているわけです。

大手予備校が運営する、この大学入試の合格可能性判定システムと対比しながら、リクナビが手掛ける就職支援事業について記してみます。


次のエントリに続けます)

2019年10月18日金曜日

雲泥

危機管理能力に圧倒的な差を感じます。事後の対処が対照的です。
二階氏、まずまずに収まったを撤回
台風被害で表現不適切と
自民党の二階幹事長が、台風19号による被害に対し、
――まずまずで収まった――
と発言し、野党からの批判を浴びました。結局、
――被災された皆様に誤解を与えたとすれば、表現が不適切だった。発言には気をつけていきたい――
と謝罪に追い込まれました。事実上ですが。本意ではないにしても、、被災地に出向いて防災・減災に取り組む姿勢のアピールと相まって、取り敢えず事態は収束に向かったわけです。

一方、国民民主党の森ゆうこ参議院議員の質問通告問題です。質問通告内容の外部漏洩に話をすり替えて、調査チームを立ち上げると...燃料を投下してしまいました。引くに引けなくなって、調査する体裁を整えひっそりとフェードアウトしていくと。そんな絵図ではないでしょうか。

彼我の主張する政策の是非はさておき、政権担当能力の雲泥の差が具現化した印象です。

自民一強状態に安住し、それを許しているのは野党の自分達である、そういった認識がない限り、政権交代可能な二大政党制の実現など夢のまた夢です。

幻滅

”あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 中間報告”が公開されました。その中間報告の中で展示作品について、

多くの人が不快だ、心を傷つけられたと問題視する作品は、表現の自由の保護の対象となるのか。
という問いに対し、
単に多くの人々にとって不快だということは、展示を否定する理由にはならない。芸術作品も含め、表現は、人々が目を背けたいと思うことにも切り込むことがあるのであり、それこそ表現の自由が重要な理由。
との回答が記されていました。シャルリー・エブド襲撃事件が何ら糧になっていないことがよく解ります。

時同じ頃、神戸市立東須磨小学校の教員いじめ問題が報道されました。上記”人様に不快感を催させる行為を肯定する文言を目にすると、虐めが根絶しないのも頷ける気がします。

2019年10月8日火曜日

専制

「表現の不自由展・その後」が10/8(火)午後から10/14(月)まで展示されることが決まったようです。これを受けて河村たかし名古屋市長が座り込みの抗議をするとのこと。

まぁ、終了日も決まっていますから、最長7日間弱のパフォーマンスです。それはどうでもいいのですが、やはり大村知事の専制的な決定には反発します。該展覧会を巡るこれまでの流れにおいて、時折、市民、県民、ばあいによっては国民の民意が垣間見えたわけです。
74%が反対「慰安婦少女像」の芸術祭展示問題アンケート結果発表
文化庁があいちトリエンナーレ2019に補助金を交付しないとした決定に対し、適切46%、不適切31%という世論調査の結果もあります。

理由はともかくこちらも一つの民意の表われです。
自民県議団「賛同は困難」 不自由展再開で大村知事に申し入れ書
恫喝的な言動は容認しませんが、おびただしい数の、展示を抗議するFaxやメールが事務局に届いているのも事実です。

そういった民意に何ら応えることなく”表現の自由”を口実に再開をゴリ押しするという決定が民主主義に基づいたものなのか甚だ疑問です。当しく民主主義を装った専制的な決定であって、愛知県は大村強権王国との批判も免れないと考えます。

これも首長多選の弊害かもしれません。


2019年10月2日水曜日

痛感

まだまだ考察不足であることを痛切に実感しました。

以前のエントリで、豚コレラ対策としてワクチン接種が遅きに失したことの理由として挙げられている、”豚肉輸出への打撃”に疑問を呈しました。国内の豚肉生産量の約0.25%程の輸出にそこまで配慮する合理性が理解できませんでした。

ただ最近、輸出入に関わる別の理由がワクチン接種が遅らしたのでは、と推測しています。理由として行政の無作為、判断の誤りよりはもう少し妥当性があるように受け止めています。

それは、豚肉の輸出ではなく、実は輸入に理由があった、ということです。豚へのワクチン接種を開始すると、国際的に”ワクチン接種が必要な国”である”非清浄国”にグループ分けされます。

これまで清浄国であった日本は、非清浄国から日本への豚肉輸出を拒否できました。勿論、清浄国である米国やカナダからの安価な豚肉の国内流通は妨げられていませんが。ところが日本が非清浄国になってしまうと、米国やカナダに加えて非清浄国からの豚肉の輸入圧力に晒されることになります。

つまり、清浄国というある意味輸入障壁で国内養豚業は保護されてきましたが、非清浄国化によってその障壁が取り除かれ、安価な豚肉がどっと国内に流入してくるというわけです。

国内養豚業保護を目的に輸入を規制したり高率の関税をかけることは、おそらくWTOの国際ルール違反との批判をあびることになります。そこで、OIE(国際獣疫事務局)のルールを使って清浄国/非清浄国間の障壁のようなもので国内養豚業を保護してきたと、そんな処ではないでしょうか。

であるならば、豚へのワクチン接種による非清浄国化を回避するため、接種の時期が遅れたというのも首肯できる話です。

気づくことができませんでした。