2018年5月27日日曜日

上前

ここ最近、”キャッシュレス”の語をしばしば見聞します。
キャッシュレス  【cashless】銀行口座への振り込みやクレジット-カードによる支払いなどのように,現金のやりとりなしで決済がなされること。
加えて、プリペイドカード(Vプリカ,JCB,LINE Pay等)、デビットカード(Visa,JCB等)、電子マネー(nanaco,Suica,WAON等)といった新規格もキャッシュレス決済のツールであり、もう、何が何だかといった様相を呈しています。様々な態様があるわけですが、現金で、或いは銀行口座から事前に入金、支払いと同時に銀行口座から引き落とし、クレジットカードが仲介することによる事後払い、といった分類になるでしょうか。ですから、電子マネーと言っても現金で入金すれば前払い型ですし、クレジットカードで入金すれば事後払い型になります。

PayPalもあくまで決済手段であって、銀行口座からPayPal口座に入金すれば前払い型(米国のみ)で、クレジットカードで入金すれば事後払い型ということです。

飲食店で食事後、或いは、スーパーで商品をカゴに入れた後、”キャッシュレスだからと言ってそのまま店を出てはいけないことは、辛うじて理解できました。

このようなキャッシュレス化は、先日、NHK クローズアップ現代+でも取り上げられていましたし、
現金お断り”で暮らしが激変!? ~追跡・キャッシュレス最前線~
経産省からも
キャッシュレス・ビジョン
というキャッシュレス化を促進する資料が公開されています。

決済のキャッシュレス化が注目される中、それに歩調を合わせるかの如く、国民年金保険料等の社会保障費、自動車税や固定資産税等の地方税、所得税等の国税のクレジットカードや電子マネーによる納付が可能になりつつあります。

ただ、社会保障費や税金のキャッシュレス納付は既に銀行の口座振替制度によって実現されています。最初に口座振替の手続きさえしてしまえば、期日までに必要な納付額を銀行口座に入金しておくだけで後は自動で引き落とされ、納付の手続きが進められていきます。ですから、これまで口座振替以外に選択肢がなかったキャッシュレス納付に、新たな納付方法が現れてきた、というのが実の処でしょう。

口座振替を利用するには、銀行窓口に書類を提出したり、手続き完了までに時間がかかるといった煩わしさはあるものの、それは手続き完了までの話です。完了後の納付に関わる手間は大きく低減されますから、この制度は相当程度利用されているはずです。

では、何故口座振替以外にキャッシュレス納付の手段を増やそうとするのか、ここの部分はよくわかりません。転勤、転職、その他で住所が頻繁に変わる層に向けて、という理由しか思いつきません。単に多様な納付手段を用意して納付者の利便性向上を図る、といった程度の目的なんでしょうか。(実はカード会社や電子マネー運営会社、及び、納付先の事情では、と推測していますが、それはいずれ別エントリで記します。)

さて、口座振替を除くキャッシュレス納付についてです。地方自治体納付分については、クレジットカード取り扱い自治体は拡大しているものの、未だ全国全ての自治体で可能にはなっていないようです。ただ、Yahoo!公金支払いのようなようなインターネットサービスとクレジットカードの組み合わせ、或いは、上記電子マネーやプリペイドカードを使用したコンビニでの納付書払いを含めれば、公金全てのキャッシュレス決済はほぼ実現できているのではないでしょうか。

ここから本題に入りますが、社会保障費や税金をキャッシュレス納付する際において、現金納付やキャッシュレス納付の方法の間で割引率が異なったり、クレジットカード払いでは手数料が課せられる場合もあることに違和感を覚えたわけです。

いくつか例示してみます。


国民年金の保険料

期間をまとめての前納や幾通りかの納付方法があって判り難いので、平成30年度被保険者の1カ月当たりの保険料16,340円で考えます。

          (単位:円)   
1.納付書による現金納付:16,340
2.納付書による電子マネー納付:16,340
(クレジットカードによる電子マネーのチャージで0.5-1.5%のポイント還元あり。)
3.口座振替 毎月納付:16,340

(翌月末の納付期限に前月分保険料を引落し)
4.口座振替 早割:16,290
納付期限より1カ月早く口座振替
=当月保険料を当月末引落し
現金納付には未適用
5.クレジットカード:16,340
(毎月末日に当月分の保険料をカード会社が立替納付。
クレジットカード利用による0.5-1.5%のポイント還元あり。)

2年前納では、393,000円[(16340+16410)*12]が、378,580円(現金納付,クレジットカード納付)、377,350円(口座振替)
でのお支払い)となっています。

つまり、納付額だけを見れば、現金納付でもクレジットカード納付でも額は変わらず、割引優遇されるのは口座振替ということです。クレジットカード利用によるポイント還元も円換算して加味すれば、カード利用は現金納付額から0.5-1.5%の割引が受けられることになり、現金納付より優遇される仕組みになっています。


クレジットカードの決済手数料上乗せ

少し話を外れます。クレジットカード決済に関し、今でも時折衆目を集める話題として”決済手数料上乗せ”があります。

最近では、飲食店や物販店で精算にクレジットカードを使用する際、店側から決済手数料を上乗せ請求されることは少なくなってきたと実感していますが、以前は珍しくありませんでした。個人経営の店だけでなく、そこそこ名の知れたパソコン販売のチェーン店でも経験しています。

物販についは、現在では実店舗での決済手数料請求はほぼなくなってきたのかもしれません。おそらく、クレジットカード決済が至極一般的であるインターネット通販の隆盛によるものです。

飲食店についての現状はよく判りません。以前は、偶々入店した店で”クレジットカードご利用の場合は***%の手数料を申し受けます”などといった掲示を見たものですが。(この理由ではなく)再訪していないので現在の取り扱いについては知りません。ここ最近訪れる飲食店は、元々クレジットカードの非加盟店か、或いは手数料を請求されない店ばかりですから。

クレジットカード利用客への手数料上乗せについては、”クレジットカード”、”手数料”、”上乗せ”、”加算”、”規約違反”といった語で容易に情報を入手できます。ただ、殆どはクレジットカードの総合的な解説サイトです。かつては手数料上乗せ、利用金額の制限、あまつさえ利用拒否といった塩対応をした店の実名告発のようなサイトも目にしましたし、食べログの店舗情報に手数料が必要だったり、利用制限がある旨堂々と記載されていました。最近では、
日テレ・スッキリ、クレジットカード規約違反状態の店を放送か「一定金額以上で使用可にして売上増」とメリット説明
といったサイトも見つかりましたが、手数料上乗せ店の増減は不明です。

このカード加盟店のカード利用者への手数料上乗せ請求は、利用金額や時間帯による利用制限と共に、店がクレジットカード加盟店としてカード会社と契約する際の規約違反に当たります。但し、法律に抵触しているわけではありません。

JCBカードで加盟店規約の第11条2項で、
加盟店は、有効なカードを提示した会員に対して、商品の販売代金ならびにサービス提供代金について手数料等を上乗せする等現金客と異なる代金の請求をすること、およびカードの円滑な使用を妨げる何らの制限をも加えないものとします。また正当な理由なくして信用販売を拒絶し、代金の全額または一部(税金、送料等を含む)に対して直接現金支払いを要求する等、会員に対して差別的取扱いは行わないものとします(下線入れました)
と規定していますし、
三井住友カードでは、加盟店規約第4条(信用販売)1項に、
加盟店は、会員が、カードを提示して、物品の販売、サービスの提供、その他加盟店 の営業に属する取引を求めた場合は、本規約に従い、現金で取引を行う顧客と同様に、 店頭において信用販売を行うものとします(下線入れました)
とあります。

ここで明確にしておくべきことは、カード利用者への手数料上乗せという行為が単に規約違反に当たるということではありません。クレジットカードの利便性にただ乗りした欺瞞行為であるという点が指弾される根本です。

真偽はともかく、一般にクレジットカード決済の店への導入は、集客向上、客単価上昇、現金管理の手間削減といった利点があるとされているようです。

店の選択においてカード利用による優待やポイント還元などのカード取扱店を選好させる仕組みに加え、負担を先送りしようとするヒト本来の心理に基づく、想定以上の消費機会出費の増大を喚起させる効果があるのでしょう。そういった効果の対価として店がカード会社に上納する手数料が設定されているわけです。

カードの利用者は、上記規約を承知しているか否かに依らず、それまでの殆どの店でのカード利用の経験から、現金支払いの場合と同条件でカードの利用ができるつもりでいます。物販店であれば会計の際、カード利用で手数料を請求されれば購入をキャンセルすればいいのですが、飲食店では通常食後に会計しますから手数料を加算してカードで決済するか、現金で支払うかの二択です。手持ちが心細ければカード決済一択となります。或いはスマホで振り込むか...

確かに、飲食店でカード利用額の5%とも言われるカードの手数料率が高率であるのは間違いありません。個々の店で状況は異なるのでしょうが、その手数料分を集客増と客単価上昇でどこまで補えているか興味のある処です。で、実際店側はどう対応するかというと、カードの手数料分を加算した価格に改訂する、カード会社との契約を打ち切る、のいずれかの選択になります。カードの手数料分を加算した価格に値上げして現金支払いの客にもしわ寄せするか、上記カード決済導入による効果を放棄するか、ということです。前者で、割高感を生じ客離れが起きるのか、後者で客離れや客単価の低下を甘受するのかは個々の店の特性や判断という部分に帰結するのでしょう。

では、カード決済者に個別に手数料を請求することが妥当なのかというと、そういう話でもありません。該規約違反は上述のようにカード利用客を誤認に導き規約外の手数料を負担させられますし、規約を遵守している他店との公正な競争を阻害することになりますから。

まぁいずれにせよ、カード会社との規約の下、クレジットカードの利用客は現金支払いの客より優遇されている、言い換えれば現金支払いの客が冷遇されていることには相違ありません。

どうすべきという話に触れるつもりは毛頭なく、あくまで各々の店の経営判断に依るわけですが、合理的で整合性ある説明は求めます。

ちなみに同じ規約違反であっても、”現金支払いの場合には手数料分値引き”とした方が好印象の気がします。ただ、残念ながらこれまでそういった店にお目にかかったことはありません。

ここで話の逸れついでに、上述の飲食店でカード利用額の5%とも言われる手数料率について、カードの機能である決済代金の立替、貸付の視点から考えてみます。(一回払いの場合のみです。)

飲食、物販その他のカード取扱店は、月毎にカードで決済された代金をカード会社から受け取ります。手数料が差し引かれての額であるのは言うまでもありません。一方、カード会社は月毎にカード利用者の銀行口座から一ヶ月間に決済された利用額を引き落とします。

つまり、店でカード決済が行われてカード利用者の銀行口座から利用額が引き落とされるまでの間、カード会社は利用額を立替、貸し付けている形になります。貸付先は本来カードの利用者ですが決済により店に支払われますから利用者の手元に滞留することはありません。この時の手数料が貸付金利に相当するとみなすことができ、その負担は店側が負うと、こんな構図でしょうか。ここでカード会社の貸付期間は1〜2ヶ月でしょうから1.5ヶ月としてみますと1.5ヶ月の融資期間で5%強の利息が生じていることになります。年利に換算すれば...
42%???
俄には信じられない数字です。日銀の市中銀行への貸出がゼロ金利とかマイナス金利とか騒がれている中でこの数字はなんなんでしょうか。暴利以外に受け止めようがない驚きの数字です。


話を戻しつつ次のエントリに続けます。

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