2019年7月2日火曜日

鉱脈(進行中)

前のエントリでセレンディピティーの語を用いました。
セレンディピティー:求めずして思わぬ発見をする能力。
自然科学の分野で、社会を変革するような卓越した、想定外の発見が生まれることについての一つの説明です。

自然科学だけでなく、ある何らかの行為によって想定外の素晴らしい結果が得られた時、それは何に起因するのだろうか、という話です。通常、結果を想定しない行為はあり得ません。何かをすれば、その何かに依る結果が生じるわけで、結果を想定しない行為はもはや行為ではないだろうと。

ただ現実には、結果を予測して及んだ行為が、想像だにしなかった別の優れた結果を生み出した、という事例は少なからずあります。

ペニシリン発見のエピソードは真っ先に挙げられるほどのセレンディピティーの
代表例ですし、現代の、
ポストイット(3M)
導電性高分子(ポリアセチレン)の発見(筑波大名誉教授 白川英樹博士)
サーマルインクジェット技術(キャノン(株))
レーザーイオン化質量分析技術((株)島津製作所シニアフェロー 田中耕一氏)
青色LED成功の端緒となった高品位のGaN単結晶(名古屋大学 天野 浩教授)
の実現に纏わる話もよく知られています。

ペニシリンは、ブドウ球菌の培養中に意に反して混入し、増殖した青カビから発見されました。ポリアセチレンは、意に反して触媒濃度を処方の1000倍にして合成されたことが端緒になりました。

サーマルインクジェット技術は、インクの入った注射器の針に高温のハンダゴテが接触し、針の先から微小なインク滴が飛び出しことが開発のきっかけのようです。意に沿う/反するという話ではありませんが、目の当たりにした想定外の現象が着想の元になっています。

貼って剥がせる付箋であるポストイットは、”強力な接着剤を開発する”という目的で作られた接着剤が、”極めて弱い接着力だった”ことから生まれました。意に反した結果を他の目的に転じた例です。

他、意に反してアセトンの代わりにグリセリンにコバルトを混合したことが、タンパク質等の生体高分子をレーザ照射で分解することなくイオン化できるイオン化補助剤の開発に結びつきました(レーザーイオン化質量分析技術)高品位のGaN単結晶作成技術においても、そのために必要なサファイア基板上の低温AlN緩衝層は、意に反して炉を所定の温度に達せられなかった状況から見出されました。

サーマルインクジェットやポストイットのケースを除けば、期待した結果を得る意図で行った行為に、誤り、アクシデント、勘違いや過失、機器の不調といった意図せざる要素が入り込み、該行為が想定通りに実行されなかったことによって想定外の結果が生じたわけです。

サーマルインクジェットやポストイットは意図せざる操作による結果ではありませんが、着想や結果に想定外の要素が含まれていました。

で、これらの偶発的要素と卓越した功績を結びつけるためにセレンディピティーの語が用いられるわけですが...後講釈的な感は否めない、というのが率直な処です。

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