2020年4月27日月曜日

典拠2

以前のエントリで、”姑息”の誤用について触れました。

そこでは誤用の原因の一つは政治の場にあると記しましたが、著作物でも(愚劣/低劣/卑劣/不当/無責任/不誠実)いった語感を催させる例に遭遇しましたので挙げておこうかと。


少し前に映画「日本の一番長い日」を観ました。役所広司が阿南陸軍大臣を演じた2015年版です。ポツダム宣言受諾〜玉音放送に至る政府首脳の動静、阿南陸軍大臣の割腹、並行して起きた宮城事件が題材です。

その中で、
――姑息な真似をするな――
という台詞を耳にしたわけです。ポツダム宣言受諾の可否について政府首脳間で議論が紛糾している際、大本営発表が発出されようとしました。ところがこの内容は、陸軍省の若手軍務局員が”勅命を拝した”と騙ってのものでした。これが偽であることが発覚して梅津参謀総長から出た叱責の言葉です。

虚言を弄して目的を達成しようとする姿勢には、その場しのぎというより、卑劣、愚劣といった語感をより強く感じます。この言葉が脚本、原作のいずれにあったのか、更に1967年版はどうだったのか、興味深い処です。

こういった事例の積み重ねが誤用の広がる一因であることは勿論ですが、
”募ってはいるが募集はしていない”
”要請に従わないパチンコ店は公表する”
という文言を見聞すると、著作物よりやはり(意図的に?)捻じ曲げた用法に依る処が大きいのかもしれません。




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