2023年9月18日月曜日

幻想

 残念至極です。

信頼できる政府というものは空想上の産物なのかもしれません。各々についていちいち言及しませんが、マイナンバーカードに纏わる数々のトラブルを見聞してのことです

まぁ、例えば年金記録問題や、新型コロナが蔓延した際の新型コロナウイルス接触確認アプリ(cocoa)の不具合等、政府主導の大規模システムで起こった過去のトラブル事例を思い起こせば、案の定といった処で、違和感も意外感も抱きませんでした。

言い換えれば、マイナンバー関連でこれまで露見した問題は、過去の事例を検証していれば殆どが回避し得たトラブルである、ということです。検証しない、顧みない、点検しない...お粗末の一言です。

行政(人、組織、施策)が前提としている無謬性こそが過ちを繰り返させている根源なんでしょう。もはや、旧くから継承されてきた日本の伝統的体質と言っても強ち外れではないと思っています。

過ちて改めざる、これを過ちという

当にこの言葉通りですが、更なる言及は別の機会にします。冒頭の”残念至極”は、上記体質に対してではなく民主主義システムの効率化への道が閉ざされた、少なくとも遠ざかったことに対する失望感です。

マイナンバーカード総合サイトによれば、

マイナンバーカードとは、マイナンバーが記載された顔写真付のカードのことです。
マイナンバーカードは、プラスチック製のICチップ付きカードで券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーと本人の顔写真等が表示されます。
本人確認のための身分証明書として利用できるほか、自治体サービス、e-Tax等の電子証明書を利用した電子申請等、様々なサービスにもご利用いただけます。

とあります。この全く個人に帰属する唯一無二であるはずの情報を、住民票や健康保険の情報、公金受け取りに使う銀行口座と紐付けることで多様な公的サービスに活用する、という目論見でした。自動車の運転免許証にも、という話もあったかと。

ところが、この紐付けが過ったケースが散見されています。無二のマイナンバー(個人番号)が割り当てられた個人に、例えば同姓同名の他人の住民票や健康と、保険の情報がリンクしていたり、当人名義ではない銀行口座が登録されていたり混乱を招いているわけです。

そうなると、本人確認のツールとしてマイナンバーカードの信頼性が失墜するのは、まぁ、当然です。例えば、マイナンバーカード記載の情報と、マイナンバーカードを利用して発行した住民票の情報、正しいのはどちら?といった話になります。

「私たちのふだんの暮らしでは、免許証やパスポートが、身元確認の役目を果たします。では、顔が見えず、成りすましも簡単なオンラインの世界で、身元確認や本人確認をどうするのでしょうか。その役目を担うのが電子証明書を内蔵しているマイナンバーカードです。それゆえに、マイナンバーカードは『デジタル社会のパスポート』と呼ばれています」

上記は、岸田総理の記者会見での発言のようです(R5.8.4 総理官邸)。言葉通りに受け止めるならば、マイナンバーカードが本人証明を担保する力は、保険証は言うに及ばず、免許証やパスポートを遥かに上回って最強です。

この本人確認に対する絶対的な無謬性は、民主主義社会を成立、維持するための礎である選挙に欠くべからざる前提です。マイナンバーカードについて巷間には賛否がある中、カードの取得をアメとムチのような施策で牽引してきました。前者はマイナポイントで国民の頬を張り、後者は現行の保険証廃止でカードの取得を促すというか強いるというか...

この辺りの話を見聞していると、

何だか程度が低いなぁ、真っ先に選挙に活用しないのは何故だろう。意図的か?

という疑問が生じました。健全な民主主義社会構築に資する格好のツール、というのが初めてマイナンバーという制度を知った時の素直な印象ですから。マイナンバーと健康保険証や運転免許証とのリンクは確かに社会の生産性向上には寄与しますが、生産性だけでなく社会の質、民主主義社会の健全性を高め、より賢い社会を構築するためなら、マイナンバーの選挙への活用が優先されて然るべきです。

マイナンバーカードの支持/不支持を問われた時、小手先の生産性向上のためだけに導入するのであれは失望し不支持です。社会の質を高める目的で、選挙で優先的、積極的にマイナンバーカードを活用しようという姿勢が覗えれば支持、というのが私の立ち位置です。残念ながら、現状では上記の如く失望感が否めません。

総務省から、”いろいろ便利になる”とアナウンスされつつも、マイナンバーカード選挙に活用しようという話は噂ですら聞きませんまぁ、現在の混乱を見れば...賢明なんでしょう。

ただ、選挙の度に低迷し続ける投票率が嘆かれてきた中、選挙制度にネット投票の導入を求める声は少なからずありました。投票行為に対する時と場所の制限を緩和し、より軽便で低コストの選挙を実現するための手法としてネット投票とかリモート投票が提言されてきたわけです。この、投票に対する時と場所の制限緩和が、幅広い民意を政治に反映させるために必須であることは間違いない処です。(ただ、幅広い民意が政治に反映された結果、例えば、問題先送り、大衆迎合政治、国家主義社会、統制社会を自らが選択してしまう危険を排除できないのは勿論です。民主主義による選択と最善の選択は必ずしも符合しないことは記しておきます。)

かなり以前、該このようなインターネットを介した投票に否定的な声として

”なりすましを排除できない”

とか、

”全ての有権者に洩れなくネット投票が可能なわけではない

といった意見を見た憶えがあります。

改めて、ネット投票を巡る現況を検索してみた処、意外な動きがあることに驚きました。

インターネット投票の最前線
実現できるか 山積する課題

上記リンク先によれば、つくば市が2024年10月の市長選挙と市議会議員選挙で、全国初のネット投票の実用化を目指している、とのことでした。全く存じませんでした。この結果は、公職選挙全般へのネット投票導入の試金石です。どのような課題解決を経て実現されていくのか、強い関心と共に観ていきます。



(追記していきます)

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