2016年7月2日土曜日

作意

かねてから戦時期をまたぐNHK朝ドラのシリーズには強い違和感、場合によっては反感すら抱いてきました。勿論、現在放送中の”とと姉ちゃん”も含めての話です。

どのシリーズでも、時代が戦時下の回では必ず厭戦・反戦プロパガンダドラマと化し、朝から憤懣遣る方無い気分に陥ります。で、いくつかの疑問と共に思う処を少し記してみます。

こういった厭戦プロパガンダドラマの脚本、演出はやはりそういった思想を持つ作家を起用して生み出されているのか、或いは、NHKの思想を反映するよう脚本家、演出家に要求しているのか、興味のあるところです。いずれにせよ、厭戦・反戦意識を視聴者に植え付けたいという、NHKのくどい上に行き過ぎた意向が働いているのは間違いありません。

この手法から推測すれば、過去、実際の戦時下でNHKが上記と逆方向のプロパガンダ放送をラジオで行ってきたことは想像に難くありません。かなりえげつない戦意高揚放送を流してきたのだろうなと。戦争を賛辞する、現在と鏡像の状態にあったわけですから。

そういった自らが行った過去の放送をおくびにも見せず、素知らぬ顔で厭戦・反戦プロパガンダドラマを放送していることに強い抵抗を感じます。何様ですかと。NHK様ですか。みなさまの公共放送の...ああ、そうですか。

戦争という行為の肯否以前の話として、公共放送の情宣活動によって、上から目線で視聴者を教育、啓蒙してやろうという意図を感じます。極端に言えば、厭戦・反戦思想の教育、統制を図っているのでは、と思わせます。方向性は異にするものの、かつて国家の協力者として戦争の片棒を担いでいたのと同質ではないか、ということです。

朝から、そういった意図があからさまに伝わってくるわけで、これが不快感を催させる源なんだなぁと。

その手法も実在の人物をモデルにしつつもフィクションとすることで事実と虚構の隙間を利用したものです。即ち、事実を脚色した創作を利用することで、虚構をあたかも事実であったかのように視聴者に信じ込ませるわけです。社会派と称される文芸作品、歴史小説でみられる常套手段ですが、それは果たして誠実な手法なのか、斜に見ています。

山崎豊子は正しく、百田直樹は怪しい、坂の上の雲”は事実で、はだしのゲン”は虚構という見方、或いはその逆にも与できない、ということです。

今日、戦争の賛辞、戦意高揚の手段としたそういった手法の使用はすっかり影を潜めていますが、国威発揚のためには時折用いられているような気がしてなりません。

6/28放送の中で耳にした、主人公常子の言葉です。
お国を守るために、戦争をしなければならないのは、仕方のない事です。軍人さんが、命を懸けて戦って下さっているのも、よく分かっています。ただ…戦争を讃えるような雑誌を作る事が、私には、どうしても苦しくて。いろいろなものを奪っていくような戦争を讃え、国民を、あおるような雑誌を作りたいという気持ちには、どうしても、なれないんです。なんとかして、違う内容の雑誌を作る事はできないでしょうか。
当時のNHKラジオもそうだったと代弁させたかったのでしょうか。モデルとなった女性が実際にそういう主旨の発言をしていたかもよく分かりません。

上記文言をもう少し勘ぐってみると、本心か否かはともかく、国を守るためとして消極的に戦争を肯定しているわけです。ドラマ全体としては、戦時下の思想や発言が制限された社会、窮乏生活が厭戦感を醸し出していますが、主人公の言葉として”厭戦・反戦”は発せられていません。

それを口にすることは即ち、軍部だけでなく国家、体制、為政者を批判することになりますから。過去の全体主義時代のこととはいえ、NHKは国家を批判しない、ということなんでしょう。厭戦・反戦を謳うものの、根幹の責任部分からは目を逸らすと。ご都合主義であり、日和っているというのが素直な印象です。

代わりに、国防婦人会の参加者、町内の班長といった市井の名も無き戦争協力者を憎まれ役に仕立てて厭戦感を植え付けています。やり方として如何なものでしょうか、陰湿さを感じます。
”(時代を問わず)愚かな人間に舵取りを任せると国を誤る”
くらいの台詞があればもう少し評価できるのですが...

更に記せば、上記戦時下における窮屈で困窮した生活に対する不満は当時の対戦国であった米国に向けられるのが自然な感情の発露ではないでしょうか。それが誤ったものであったとしても...

主人公の口から”許すまじ”とか、”憎むべき”といった米国を批判する文言が全く出てきていないわけです。まぁ、米国に対する配慮が働いているのは間違いない処ですが、平均的市民の感情としてそういう部分を排除して描かれていることに不自然さ、わざとらしさを感じます。

先日、NHKスペシャルで 
"そしてテレビは“戦争”を煽(あお)った"
というドキュメンタリーを視聴しました。てっきりNHKが戦時下にどういった役割を担ったかについての検証番組かと思ったのですが、期待は裏切られました。ロシアによるクリミア併合でウクライナとの間で起こった紛争の際、テレビを始めとするメディアが何をどのように伝えたか、という番組でした。

自国に都合よく、又相手国に対する憎悪を掻き立てるような報道が、演出と捏造によって行われていたと。戦時下におけるメディアの行動としては自然で合理的ではあります。報道の在り方としては全く正当ではありませんが、理解できないわけではありません。古今東西、戦時下においてメディアは常に相手国の非難、自国の正当化を通じて、戦意高揚など国民を煽動してきましたから。

この番組で取り上げられたウクライナのテレビ局とNHKは対照的です。戦時下のNHKも同様な姿勢であったと容易に類推できます。戦争の片棒を担ぐメディアによって登場人物の対戦国に対する反感が植え付けられる、そういった片鱗すら朝ドラのシリーズには窺えません。

過去の戦時下においてNHK自らは何を放送したか、そういった部分には頬かむりして”戦争という行為”そのものに対する忌避感を煽っても、不自然、不誠実、欺瞞、お手盛り、そういった印象が常に付いて回ります。

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