言うまでもなく、農産品は典型的な食材の一つです。今般の衆院選で安倍政権の継続が決まり、農業分野でTPP(環太平洋連携協定)交渉が加速すると見られています。
TPP交渉に反対の立場を取る JA全中などの農業団体に対し、経団連を含む経済界は交渉妥結を要望しているわけです。現在、交渉が進んでいるのか、暗礁に乗り上げているのかまったく存じませんが...
日本の農業に対し、経済界を含めたTPP交渉推進派からは、
”日本の高度な農業技術は、高品質の農産品を生産できる。輸出に活路を見出すことで農業分野の成長は十分可能である。”との考えをよく見聞します。
例えば、
大分県特産の甘い日田梨は、台湾に向けて現地産の5倍という高い値段にもかかわらず、輸出されています。北海道では雪国の特徴を活かしたお米で、輸出を5年間で8倍に増やした例もあります。攻めの農業政策により農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしてまいります。そのためにもTPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンスであります。といった発言です。国内の反発を抑えて、TPP交渉を進めるための詭弁に聞こえるわけです。
(2013.3.15 安倍内閣総理大臣記者会見 - 首相官邸)
耕作放棄地の現状、就農人口の将来予測、農業従事者の平均年齢、平均的な農業所得、公的資金投入による補助の状態等を鑑み、日本の農業は一産業としてどうなのか、と問うてみると、
”なかなか難しく、責任感にかける発言だなぁ”
というのが率直な印象です。
突出して優れた事例を列挙されても農業は産業であり、ワールドカップのようなスポーツの競技会ではありません。我が国農業が産業として存続、成長できる潜在的可能性と共に、農業従事者の平均的なモデル像が描けない限り甘い言葉に踊らされかねません。
自動車産業において排ガス対策、省エネ対策のために導入されたトップランナー方式を同様に農業に持ち込むのは無理があると。基礎体力に差があり過ぎです。
農業の活性化とTPPへの対応への競争的な仕組みの導入は、補助金頼みの現状を鑑みれば、既に終わってるだろ、と思えてなりません。補助金を前提としたトップランナーでしょうから。
たとえ一強が生き残ったとしても、後は屍の山では産業として存続できているとは言えません。確かに日本の平均的農産品でも国際的に高品質かもしれませんが、果たしてそれでどれだけの競争力があるのか、といった視点からの客観的評価が必要ではないでしょうか。
ヒト、モノ、カネ、加えて時間といった投入資源に対し、農業単独では一体どれだけの投資効率があるのか、他産業との比較を踏まえた、地に足のついた提案を求めます。
更に言えば、この高品質な農産品が手間暇かけた労働集約的に生産されているならば、衣料品や電気製品と同じ轍をたどることも十分懸念されるます。遅きに失しているかも...
よくわからないまま勝手なことを記しています。
同様に地方創生が話題になる時、対策のツールとして必ず農業が挙げられ、差別化、高付加価値化の方向性が正しい解として示されているような気がします。
で、やはり平均的なモデル像を蔑ろにすべきではないかと。自由主義社会の競争経済をそのまま適用するのも如何なものかと思うわけです。特段、社会主義を支持しているつもりはありません。
農業の産業としての自立性、成長性の底上げに繋がるような技術レベル向上、高付加価値化を目指して頂きたいものです。競争激化による弱肉強食で”普通に”、”平均的に”農業を営んでいる農家が淘汰されるようでは、産業として消滅してしまいます。
付加価値競争の激化で、商業主義優先の実質の伴わない虚構の付加価値で粉飾された農産品の跋扈と共に、突出してではなく、”フツーに美味しい”農産品を手掛ける真っ当な生産家の疲弊を危惧します。
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